日本オラクル株式会社は1月31日、Oracle Cloud HCMによって実現する人的資本経営について、「As is-To beギャップの定量的把握」、「従業員エンゲージメントの向上」、「リスキリング・人材育成」の3点から説明した。
日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部HCMソリューション部の矢部正光部長は、「Oracle Cloud HCMは、従業員エクスペリエンスをカバーしつつ、人的資本経営に関するアプリケーションを用意しているのが特徴である。AIを活用することで自動化やパーソナライズ化、深い分析が可能になるほか、Oracle Cloud ERP、Oracle Cloud SCM、Oracle Cloud CXとも連動する。これらをOCI上で、あらゆる企業に対して提供できる。さまざまなソリューションと連動できるのがOracle Cloud HCMの強みである。今後も新たな機能を追加する予定であり、さまざまな企業の人的資本経営を支援する」と述べた。
3点のうち「As is-To beギャップの定量的把握」では、経営戦略と人事戦略の連動が重要になるとし、「Oracle Cloud ERPとOracle Cloud HCMによって財務情報と非財務情報を連動。事業戦略を立案した場合に、必要となる人材が足りているのか、足りていないのかを比較し、ギャップを埋めるためのシミュレーションを繰り返し行えるようになる。需要と供給の予測からギャップを可視化可能になり、予算管理と連動した人事戦略の立案ができる」(日本オラクルの矢部部長)とする。
ここではOracle Fusion HCM Analyticsにより、定義済みのダッシュボードとKPIを用意していることを紹介。2021年には200項目だったKPIを、アップデートにより600項目にまで拡大。今後も増やしていく計画だという。「KPIとダッシュボードを活用することで人材戦略の推進が可能になる。お客さまは、人事戦略の観点から、競合他社との差別化につなげることができる」と述べた。
2つめの「従業員エンゲージメントの向上」では、社内に対して、人事戦略に関する説明責任をサポートしながら、エンゲージメントを高める提案を行っていることを示した。
「人的資本経営では、CEOを支える両輪として、CFOおよびCHROの役割が非常に重要になる。そのなかでCHROが担うのが、非財務情報を社外に開示するとともに、社内に対しても説明することである」とし、Oracle MEのOracle HCM Communicate機能により、各種人事施策の浸透状況をモニタリング。人事部門から発信した情報が、社員にどれぐらい読まれているかといったことを可視化でき、それを踏まえて各種施策の検討をサポートするという。
具体的には、人事部門から社員に配信したメールの開封状況や、メール内のリンクにどれだけ飛んだかといった情報を確認できる。開封率が上がらない場合には対策を行い、それを繰り返すことによって、改善を図り、CHROによる社内への説明責任を果たせるようになるとした。
また、従業員エンゲージメントの向上に向けては、Oracle MEのOracle Journeys機能を活用することができるという。「従業員エンゲージメントを高めたいと考えていても、なにからやっていいかわからないという人事部門が多い。Oracle Journeysでは、サイト上に『メンターになる』、『あなたのキャリアを育てる』といったオンボーディングやキャリア開発に関わるイベントを用意し、従業員はそこに表示されるリストをもとに、該当するサイトに飛び、完了したら戻ってくるといった活用ができる。パーソナライズされたイベントを用意したり、どんな点に注意をしたらいいのかといったガイドを用意したりすることで、高い生産性を維持しながら、従業員エンゲージメントを向上できる」という。
エンゲージメントがどこまで進んでいるのかといったことや、進捗が止まっている従業員をサポートすることも可能になる。
3つめの「リスキリング・人材育成」に関しては、Oracle Dynamic Skillsを活用。従業員のプロファイル情報に、AIを組み合わせることで、効果的なリスキリングや育成が可能になるという。「世界中のジョブスクリプションをデータとして蓄積しており、従業員の仕事の内容、スキルの状況などと照らしあわせて、AIがリスキリングやキャリア、トレーニングなどを推奨する。推奨するキャリアに対するギャップなども提示することができる。AIの推奨によって、新たな気づきや発見を提供できる」とした。
さらに、Oracle MEの新機能であるOracle Touchpointsでは、上司と部下のタイムリーな会話を支援し、マネジメント力の強化につなげられるという。ここでは、従業員のパルスサーベイやエンゲージメント分析をもとに、継続的なヒアリングの機会を提供。信頼関係の構築や、従業員の定着率の向上、成長促進に向けた行動につなげられるとしている。
日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏は、「企業には、中長期の経営戦略にあわせて、事業と人材のポートフォリオを最適化することが求められている。例えば、オラクルでは、ヘルスケア分野に注力することを明確にしているが、その背景には、優秀なAIエンジニアを確保するという狙いがある。将来の事業ポートフォリオをとらえたパーパスを打ち出し、必要な人材を確保する方法を考えなくてはならない。これは、あらゆる企業が直面するテーマになるだろう」と話す。
また、「日本の自動車業界には約550万人が従事しているが、EV化によって大きく産業構造が変化し、その流れに飲み込まれていくことになる。そのなかで、本当にリスキリングできるのか、新たな人材をどう確保するのかが課題であり、それが経営にインパクトをもたらすことになる。今後5年、10年の変化に向けて、パーパスや事業をどう見直すのか、企業と従業員の関係性をどうするのかといったことを、日本の企業は考えていかなくてはならない」と提言した。
また、コロナ以降、米国において人材の確保と維持が重要なテーマとなっており、従業員エンゲージメントが重視されていることや、世界各国で人的資本や多様性をはじめとしたサステナビリティ経営に関する情報の開示が義務化される方向が進展していること、人事部門だけでなく、CEOやCFOにとっても人材への関心が高まっていることなどに触れながら、「現時点では、経営戦略と人材戦略が一致していない経営者が多いことが浮き彫りになっている。経営戦略と人材戦略を同期させること、生産性に寄与する人的投資や、エンゲージメントを重視することも、これからの経営者にとっては必要な取り組みになる」と述べた。
その上で、「オラクルのクラウドアプリケーションの特徴は、人事だけでなく、経営管理や経営戦略と連動した包括的なアプリケーションを提供できる点にある。人材を確保するには、企業の生産性を高めることが大切であり、ビジネスプロセスやシステムが魅力的なものでなくてはらない」などと語った。
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