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Thursday, September 10, 2020

光学迷彩アーマーはもう「いつ作るか」の段階。『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』第9話ガジェット解説 - ニコニコニュース

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©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

作れます!

作中のガジェット考案やテクノロジー監修など、ギズモードがガジェットコーディーネートをしているTVアニメ富豪刑事 Balance:UNLIMITED』。第9話はいよいよストーリーも大詰め主人公・神戸大助(かんべ だいすけ)が加藤春と決別し、それぞれが別の手法で大助の父親・神戸茂丸(かんべ しげまる)を追っていきます。

加藤が仲間に支えられながら追跡する一方で、大助は鈴江のテックサポートを受けながらお金で強引に追跡。しかし2人とも最終的に行き着いたのは巨大なコンテナ船でした。

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

そこで武器商人のボディガードであるフランツ・ワインスキーと対峙した大助は、ASVアクティブサポートベール)を駆使して一時は圧倒します……。が、茂丸からの妨害とワインスキーの反撃を受けてピンチに。アクションガジェット大盤振る舞いの回!

今回のガジェット解説では、ASVをご紹介してきます。流動的な外皮で光学迷彩としても機能する、スタリッシュで攻防一体の装備

さすがにトンデモ技術感が強くて、アニメ企画時に定められていた「10年以内に作れそうなガジェット」のリアリティラインを超えてしまっているようにも思えますが、この記事でASVが「いまのテクノロジーの延長線上で作れる」ことを解説していきます。

富豪刑事 Balance:UNLIMITED』は毎週木曜24時55分からフジテレビノイタミナ”ほか各局にて放送中。各放送・配信情報などはこちら

アクティブ・サポート・ベール

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

ASVはActive Support Veilの略です。ベールのように薄いのに、防御力と攻撃力をグンと高めてくれる装備。その機能を一覧にすると:

・防御力アップ

・攻撃力アップ(身体機能サポート

光学迷彩

いきなりトンデモ感が強いですね……。でも、これらの機能は下記のテクノロジーを組み合わせれば実現可能なんです。

マイクロ/ナノロボティクスナノマシン

動的構造体

磁気浮上

郡知能

EMS(筋電気刺激)

半導体レーザー

 などなど…。

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

世界ではミリ・ミクロン・ナノスケールの大きさのロボット(いわゆるナノマシン)の研究・開発が進んでおり、性能はまさしく日進月歩。ギズの希望的な見立てでは、10年以内には実用レベルナノマシンができているはずです。そして大助が自らにスプレーしていたのは、そういったナノマシンたちになります(スプレーするアイデアはMechanical Design:寺尾洋之さんによるもの!)。

ASVを起動すると、まずナノマシンたちが磁気でお互いに作用しあって、ウネウネと意志を持った流体のように振る舞い始めます。これは磁性流体に似た挙動ですね。

ただし一点違うのは、従来の磁性流体だと外部からの磁場に反応するだけだったのが、ASVではナノマシン自身が磁場を発生させているところ。なので、たとえばいくつかのナノマシンが協力しながら磁場を発生させて、他のナノマシンたちを空中に磁気浮遊させることもできるわけです。すると、身体側に引っ付くナノマシンたちと、そのすぐ上を磁気浮遊するナノマシンたちによる2層構造が作りあげられます。これが防御力の源になります。

メカニズムとしては、まだこれといった実用例はなさそうですが、論文などで研究が進められているActive Structure(和訳:動的構造体)という仕組みを使っています。言葉で説明するより動画を見ていただくのが早いので、以下の動画をご覧ください。

ただの紐なのに、それを高速に動かし続けることで構造体となるんです。びっくりですよね。

ASVはこれと同じことをミクロで行なっています。身体と固定したナノマシンが他のナノマシンを近くの空中に磁気浮遊させ、浮いているナノマシンたちがチューブや層構造を作っていきます。そしてその内部をナノマシンが高速で行き交うことによって、動的構造による強度が発生する仕組みです。

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥 「送電用のアドリウムアンテナ」は船全体をカバーする無線給電システム

イメージとしては、上の動画の紐が金属製のナノレベルの細いワイヤに置き換わって、そのワイヤが何万と大助の体の上をスレスレで走っている感じ。これならベールのように薄くても相当な強度を発揮できると思われます(この高速ワイヤを太陽のコロナのように外側にもループさせることで弾丸も弾ける仕様になっており、そうした際の姿が特にベールに見える)。

問題はナノマシンの体積が小さいせいで保持できるエネルギーが小さいところですが、それをカバーするのが首や腕などに装着した黒いパーツ(ノード)です。無線送電で電力を供給し、ナノマシンたちの指揮を取るのが主な役割。ただし、何百億個とあるナノマシンの挙動を1つの司令塔で中央主権的に制御するのは実質無理なので、ノードは大まかな命令だけ下し、実際にどう動くかはそれぞれのナノマシンたちの知能に任せる方式です。アリやハチのように、1つ1つのナノマシンはそれほど賢くなくても、郡を成すことで高度な知能を発揮するようにできています(以下の動画のように)。

防御力を発揮する仕組みを解説し終わったところで、続いては攻撃力アップの仕組みを解説します。ASVは、大助が体術を素早く強力に繰り出せるよう身体機能をサポートできるんです。

たとえば殴る動作をサポートする場合、ASVは主に4つの方法でサポートします。まず1つ目がナックガードで、殴る動作を検知した際に拳周りのナノマシンを増量して手の防御力を上げつつ、拳に重みを持たせます。続いて2つ目がEMS(電気的筋肉刺激)による筋力の引き出しで、これは無意識に制限している筋肉の収縮力を電気刺激でパワーアップさせてしまうというもの。皮膚の下にある筋肉であれば外からの電気刺激でも動かせちゃうんです(下の動画のように)。でも力が出せる代わりに筋肉の疲弊は激しくなるので、長時間の使用はキケン。

そして3つ目のサポート機能は、ASV自身が収縮・膨張することによるパワーアシストです。筋肉細胞のそれぞれが少しずつ収縮することで筋肉全体が大きく収縮するように、ASVのナノマシンも相関距離を少しずつ短く・長くしたりすることで、体の動きをサポートできます。言わば外皮筋肉ですね。最後に4つ目が感知・反応速度を向上させる機能で、これは人体が持つ脊髄反応のテクノロジー版みたいなものです。ノード(黒いパーツ)に埋め込まれているセンサーが敵からの攻撃を感知した瞬間、身体への刺激を通して大助に知らせるとともに、筋力引き出し機能とパワーアシスト機能を組み合わせて回避行動を反射的に取ることができます。

問題はASVが大助の意図しない回避行動を取ってしまうパターンで、これをなくすためにはある程度の訓練が必要だったことでしょう。たとえばASVを装着した状態でトレーニングを行ない、仮想の敵や攻撃に対して大助がどう反応するかデータを取ってASVの行動基準を大助に合わせていくといった風に。ここで興味深いのが、たとえASV手動で回避行動を取っていたとしても、大助が自分の判断で回避したと感じる場合もあるところ。実は自発的な行動かどうかは、脳が後付けで決めていたり錯覚したりするんです。

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

あとはASVの光学迷彩の解説ですね。これは割と単純に、ニンテンドー3DSみたいなもの。

3DSの画面みたいに角度によって見えるものが変わるディスプレイは近年ものすごい進化を遂げていて、たとえばこちらのディスプレイだと100人に別の映像を見せることができます(将来的には1,000人単位)。ASVがやっていることはこれの応用で、ナノマシン半導体レーザーなどの発光方法を埋め込み、ASVの表面全体をディスプレイと化しているんです。あとはノード(黒いパーツ)が背面の景色を読み取り、それを相手の角度に合わせてディスプレイで表示することで、まるで透けているかのように見えるカラクリ。

以上がASVの解説でした。こんな風に要素分解していくと、なんか作れそうな気がしてきませんか? 僕は作れると信じています(1,600億円あればなおさら)。ちなみにワインスキーが大助に向かって撃った武器=ヴォルテクスガンの解説は第10話の記事の予定!

グルットナでデジタル東京

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

茂丸の行方を追うべく市街地の監視カメラの映像を集めようとした鈴江でしたが、映像を先回りして消されてしまい…打つ手なし…。

と思いきや、大助の機転と鈴江の対応(と加藤の「バランスアンリテッドコール)でクルットナキャンペーンが開始しました。

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

東京にいるスマホユーザーターゲットに展開されたこのキャンペーンは、スマホを頭上に掲げて一回転しながら映像を撮って送ると先着10万名に10万円がプレゼントされる、というもの。鈴江はそれらの映像を写真測量法や顔認証などのアルゴリズムにかけることで、東京全体のデジタルツインを作り上げながら茂丸の移動経路を追うことができました。

©筒井康隆新潮社伊藤智彦・神戸財閥

お金がかかりまくる極端なパワープレイですが、優秀なデータポイントスマホが普及している現代ではもっとも効率のいい情報の集め方かと思います。参加者にとっても、個人情報(身の回りの景色)と引き換えに10万円の報酬が貰える単純明快な利害関係です。むしろ便利機能との引き換えに個人情報を収集するアプリなどに疑問を抱くキッカケとなってしまったかもしれませんね。

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