【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権内の権力バランスが変化しているとみられる中で、注目されるのは、正恩朝鮮労働党総書記の最側近で急速に存在感を高めた趙甬元(チョ・ヨンウォン)党政治局常務委員だ。趙氏はナンバー2として権勢を誇っているとみられないよう慎重に行動しているとされるが、影響力を維持し続けられるか予断できない。
「北朝鮮で党を動かす人物は趙甬元氏だ」。北朝鮮外交官出身の研究者として正恩政権の権力構造を分析する高英煥(コ・ヨンファン)氏は、こう断言する。趙氏が兼務する党組織書記は、党や軍の人事を一手に握り、あまりの権限の絶大さに金正日(キム・ジョンイル)総書記は自ら就任し、死ぬまで手放さなかったポストだ。
趙氏は2021年1月の党大会を記念した軍事パレードのひな壇に、正恩氏と同じ黒い革コートを着て現れ、観衆を驚かせた。側近数人だけに許された特権だった。翌年には正恩氏と並んで聖山の白頭山(ペクトゥサン)を白馬で駆る姿が報じられた。
ずば抜けた記憶力と業務処理能力の高さで、ついたあだ名は「歩き回るコンピューター」。正恩氏の他の側近らの粛清を主導。同格であるはずの軍事担当党書記を公然と叱りつけ、幹部らを震え上がらせた。
地方の平凡な家柄に生まれたとされるが、金日成(キム・イルソン)総合大の物理学部に入学すると、卒業前に党組織指導部の幹部候補に選抜された。最大の転機は、地方幹部時代に東部、元山(ウォンサン)で子供時代を過ごしていた正恩氏や金与正(キム・ヨジョン)党副部長兄妹のお目付け役に任じられたことだ。
正恩氏が半年ほど軍服務をした際も保護者役を務め、正恩兄妹や母、高容姫(コ・ヨンヒ)氏の信任を得たとされる。正恩氏は「死ぬまで自分に忠誠を尽くす人物」とみなし、異例のスピード出世をさせたとみられている。
趙氏は慎重さも見せる。周囲に「私の派閥だと絶対言うな」「口に気をつけなければ死ぬぞ」と告げた。正恩氏の叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏が13年に処刑された際、「派閥形成」も罪状となった。ナンバー2として派閥を持つことは粛清と隣り合わせだとの自覚があるようだ。
ただ、党の行事で公的な序列2位の元老格より先に着席したり、正恩氏がいる中でポケットに手を入れたりと「おごり」とみられかねない姿も報じられた。
妹が元山で豪奢(ごうしゃ)な暮らしをし、酔ったけんかで逮捕された息子が即放免されるなど、趙氏の権勢をかさに着る家族の振る舞いも伝わる。家族の問題に足をとられる危険も付きまとう。
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