9月15日〜9月18日に、千葉県の幕張メッセ開催された「東京ゲームショウ2022」。この中の「TGSフォーラム」にて、JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合) Presents eスポーツセッション「Future of esports」と題したパネルディスカッションが開催された。
日本国内のeスポーツをどのように発展させるのか
パネリストとしてプロeスポーツ選手のネモ氏、マウスコンピューター マーケティング本部 本部長の杉澤竜也氏、経済産業省 商務情報政策局 コンテンツ産業課 課長補佐の上田泰成氏、Aetas代表取締役社長で4Gamer.net編集長の岡田和久氏が登壇し、eスポーツの未来について語った。
「eスポーツというか、オンラインゲームのギルド(プレイヤー同士の集まり)での対戦が『ラグナロクオンライン』で始まったのが2000年初頭。ここに日本でのeスポーツの起源がある」と岡田氏は口火を切った。
日本eスポーツ連合(以下、JeSU)が結成されたのは2018年だ。それから約4年間でeスポーツを巡る環境は大きく変わった。2017年には、eスポーツを知っていると答えた人が14.4%であったのに対し、2021年3月には79.9%と、ほぼ8割の人がeスポーツという言葉を認知するまでになった。
そして2020年のeスポーツ市場規模は66.8億円で、2024年には180億円を超えると予想されている。ファン層についても、2018年では10代〜20代が中心だったが、年を経て年齢を重ねるにつれて30代以上にも拡大していった。
ここまで市場規模が大きくなるにつれ、eスポーツへのさらなる投資を呼び込むため、広告効果を測定する動きも登場する。1990年代後半〜2010年代に生まれたいわゆる「Z世代」と呼ばれる人に向けて、eスポーツを通じた「ゲーム×経済の好循環」を発展させることが目的だ。
その結果、eスポーツスポンサー企業の事例として分かったのが、9割以上のファンが、応援する選手やチームのスポンサー企業や展開する商品について、良い印象を感じているということだった。
これについて杉澤氏は、eスポーツが好きで集まってくる人に対しては、どのようにPCが売れるのかを考えたときに、「あくまでゲームが好きで集まってくるのであって、PCを買いたいわけではない。PCはあくまでもツールだ」と語る。PCの知識を手に入れよう、理解しようとしている人は従来の媒体でアプローチすればよいが、eスポーツが好きで集まる人はこれに入らない。
このため「プロ野球選手が持っていたグローブやバットを欲しいというような形で、あの選手が使っているからという、あこがれから購入動機を生んでいく」アプローチを取っているという。「eスポーツの選手やチームをスポンサードすることによって、ファンに対してマウスコンピューターのゲーミングブランド『G-Tune』がいい、というメッセージを届けてもらうことが重要だ」と語った。
ただし、スポンサードするにあたってもいろいろと課題がある。「今はどんどん新しくチームが立ち上がっているが、投資をする側としては、どこでもうけていくのかという話をしなければならない」と杉澤氏。
「現状、チームとして知名度は高くないが、この人たちならとスポンサードすることもある。それは全然違うところでお金を安定して稼ぐようにし、新規事業としてeスポーツに取り組んでいるパターンだ。チームにベットしても、いつからリターンが来るか分からないが、母体となる企業の資産価値を生かしながら、マウスコンピューターのPCをより拡散するように協力していくという流れも生まれている。短期的な成果だけではないところで、長期的に見ていくスポンサーがいるという情報を伝えたい」(杉澤氏)
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eスポーツをどう支援していくか
これから、国としてeスポーツをどう支援していくかを問われて上田氏は「GIGAスクール構想で1人1台タブレットが支給されているが、部活動に対しての支援は行われていない。地方自治体には体力の差があるので、どう底上げを図るかが重要だ。文部科学省と連携してやらなければいけない」と語る。
経済産業省としては、デジタル部活動支援という議論を進めていて、eスポーツ選手が来るなどして民間からの派遣も視野に入れ、eスポーツを推進できないか検討している段階だという。
このような流れを受けて、JeSUでは本パネルディスカッションで「日本eスポーツアワード」の創設を発表した。eスポーツのプレーヤーをたたえるために、さまざまな賞を設ける予定だという。
ネモ氏はこれを受けて「選手としてはベストマッチ賞があるといいと思う。選手がすごいプレーをしても、何がすごいのか分からなかったりするので、それをいろいろな人に見てもらうのはうれしいと思う」と語る。
今後開催される国際競技大会やイベントとして、2025年には大阪府で「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」が、2026年には愛知県で「第20回アジア競技大会」が開催される。第20回アジア競技大会に対しては、JeSUとしてもスタッフを派遣する予定だという。また大阪・関西万博では、eスポーツが重要な役割を果たすことも期待されている。
杉澤氏は「大きなイベントは注目されるが、実はそこで働いている裏方の人が大事だ」としながら、「すごい賞金をもらう大会の裏にはたくさんのいろいろな人が関わっていて、そこであのビジネスが生まれているということをもっと知ってもらいたい。そういう所での雇用が生まれていき、経済が回っていく」とも語った。
日本に浸透しつつあるeスポーツだが、こうしたイベントを通じてより裾野を広げ、経済活動として認知されていくことにより、プレーヤーの層も厚くなるし、ビジネスも生まれていくのだろう。今後のeスポーツの発展を期待したいと思う。
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