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Wednesday, March 23, 2022

もっと知りたい!エネルギー基本計画④ 再生可能エネルギー(4)豊富な資源をもとに開発が加速する地熱発電 - 経済産業省 資源エネルギー庁

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山葵沢(わさびざわ)地熱発電所 (提供)湯沢地熱株式会社

日本のエネルギー政策の基本的な方向性を示す「第6次エネルギー基本計画」が2021年10月22日に策定されました(「2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな『エネルギー基本計画』」参照)。計画には、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた課題と対応、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服などを中心に、さまざまな方針が盛り込まれています。その内容について詳しくご紹介するシリーズ、第4回は、世界的にも有数の資源量を誇り、安定的な発電が可能な地熱発電の今後の方向性について見ていきます。

地熱発電のポテンシャルをもっと生かすために

日本は世界第3位の豊富な地熱資源量を持っており、地熱発電のポテンシャルが非常に高い国です。地熱発電は、CO2排出量がほぼゼロで、持続的に発電が可能な再生可能エネルギー(再エネ)であり、天候などの自然条件に左右されず安定的に発電できる「ベースロード電源」でもあります。また、発電に使用した熱水がハウス栽培などに利用できるなど、地域経済へのメリットもあります。

にもかかわらず、実際に導入されている発電設備容量は、現在約60万kWにとどまっており、資源量に対する割合からすると、世界的に見ても少ないといえます。

その理由のひとつには、地熱が目に見えない地下資源であり、開発にかかるリスクやコストが高いこと、また地熱資源が北海道や東北、九州など火山地帯にかたよって存在しており、適した地域が限られているといった自然的な条件が挙げられます。加えて、地熱を利用することで温泉資源への影響を心配する地元の声があること、また、関連する法令の規制などにより、開発に必要な許認可手続きなどの対応が求められるケースがあるなど、社会的な面での課題もあります。

しかし、2050年カーボンニュートラル達成という大きな目標を実現するためには、地熱発電のポテンシャルをもっと生かしていくことが必要です。そこで、2030年には148万kW、つまり現在の2倍以上の導入目標を定め、積極的に導入拡大をはかることが決定されました。そのために乗り越えるべき課題や、今後の方針について、第6次エネルギー基本計画に示された内容をくわしく見ていきましょう。

開発にかかる期間を短縮し、コストの低減をはかる

JOGMECが先導して地熱資源の調査を実施

地熱開発は、地熱貯留層を探し当てて実際に発電にいたるまでに、およそ10年という長い期間がかかります。しかも、資源は地下深くにあるため、掘削調査をしても、蒸気や熱水を確実に掘り当てることができるとはかぎりません。加えて、井戸を1本掘るのに数億円の費用が必要なため、その高いリスクとコストがネックになっています。

そこで、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が地熱資源の調査を先導的におこない、調査データを開発事業者に提供するとともに、掘削した井戸を希望に応じて事業者に引き継ぐことで、開発のリスクとコストの低減をはかることとし、2022年度までに約30地点の先導的な調査を進める予定です。この他にも、JOGMECは年間およそ20件程度、事業者による地表・掘削調査への支援をおこなっています。

また、コストや投資リスクを軽減するためのリスクマネーを提供しています。事業者が地熱資源を探査する際の資金の出資や、事業者が井戸の掘削などで融資を受ける際に債務の一部を保証するなど、JOGMECが支援していく体制を整えています。

関連省庁と連携して、規制の運用を見直し

地熱発電の導入促進にあたり、自然公園や温泉事業者への配慮を前提に、関係省庁と連携して法律による規制についても運用の見直しをおこなっています。たとえば、日本の地熱資源はその8割が国立・国定公園内にあり、従来はその中での地熱開発が認められていませんでした。しかし、今後は自然環境の保全などの配慮をしつつ地域と共生した地熱開発を進められるよう、規制の運用の見直しがはかられました。

また、環境省も協力して地熱開発を推進するという方針のもと、2021年4月に「地熱開発加速化プラン」が発表されました。ここでは、地球温暖化対策の推進に関する法律の改正によって創設された新たなしくみを通じて、導入の促進区域を設定したり、温泉モニタリングにより科学データを収集・調査し、事業者や地元に提供したり、地域との調整をはかることで、通常およそ10年かかる開発期間を最大で2年程度短縮し、2030年の目標を確実に達成できるよう取り組みを進めていきます。

新たな技術の開発に取り組む

マグマに近い深部の熱水を活用する革新的な試み

開発リスクやコストを低減するために、技術開発もおこなっています。たとえば、熱水や水蒸気の有無、地層の状態といった地下構造を探査する技術の向上や、発電所の運転開始後にじゅうぶんな蒸気量が維持できるよう人工的に水を注入する技術(人工涵養)の開発などです。

これに加えて、革新的な「超臨界地熱発電技術」の開発も試みています。この技術では、従来よりもさらに地下深く、マグマに近い部分にある超臨界状態の熱水資源(温度、圧力により「超臨界状態」、つまり液体と気体の区別がつかなくなっている水)を活用することで、これまでよりも大規模な発電が可能になります。超臨界地熱資源は、超高温・超高圧であることに加え、酸性濃度が高いといった特徴があるため、井戸やタービンなど設備の腐食対策や、大深度の掘削技術を確立する必要もあり、こうした要素技術の開発もおこなっていきます。

地域の理解を促進し、共生をはかる

温泉資源にも配慮し、モニタリングや意見交換などを実施

開発にあたっては、近隣の温泉資源への影響を心配する声もあるため、地元の理解を得ることが必須です。日本温泉協会からは、「温泉事業者の多くは地熱反対派ではなく、地熱心配派であり、無秩序な開発がおこなわれることを懸念している」との声が上がっています。こうした不安を解消すべく、引き続き地元との意見交換の場を設け、温泉への影響にかかわるモニタリング調査や、勉強会などを開催して理解の促進につとめます。

エネルギーの2次利用を積極的に推進

地熱発電は、発電後の熱水を2次利用できるメリットがあります。たとえば、農業用ビニールハウスなどを温めたり、農産品を乾燥させるなどの取り組みもおこなわれており、地域の産業をささえる役割も果たしています。

発電後の熱水を利用したハウス栽培
北海道・森町でおこなわれている、発電後の熱水を利用したハウス栽培の写真です。写真

今後もこのような地域と共生した開発を進め、農林水産業や観光などの産業振興に取り組む自治体を「地熱モデル地区」として選定し、情報発信していきます。

地熱発電は2050年カーボンニュートラルに向けた「グリーン成長戦略」(2021年6月18日改定)にも位置付けられています。今後、産業としての成長がますます期待されます。

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次回は、再エネの導入拡大をするうえで避けて通れない系統制約への対応について、詳しくご紹介します。

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記事内容について

資源・燃料部 政策課

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