Pages

Tuesday, February 2, 2021

コロナ対策は大事でも…職場の「換気」でさまざまな弊害、企業の法的責任は? - オトナンサー

mungkinbelum.blogspot.com
感染対策の換気で寒い思いも…
感染対策の換気で寒い思いも…

 寒さが厳しくなる中、新型コロナウイルス感染防止策の徹底がますます求められています。

 ネット上では、有効な感染対策の一つとされている「換気」について、「換気をしなければと思いつつ、寒いから窓を開けたくない」などの本音が上がっていますが、中には、出社時のオフィス環境について、「職場の窓が全開なので、コートを着て仕事している」「上司が『明日から窓を全開にする』と言ってきたので怒りを覚えた」「さすがに窓を開けっ放しだと寒くて仕事に集中できない」「コロナを予防できたとしても体調を崩しそう」など、寒いオフィス環境での仕事を余儀なくされている人もいるようです。

 一方で「オフィスの室温は法律で定められていたはず」「快適に仕事ができる環境を整えていない場合、企業側にペナルティーはないの?」といった疑問の声も上がっています。オフィスの温度や湿度を巡る法的問題について、白石綜合法律事務所の宮崎大輔弁護士に聞きました。

コロナ対策も労働者の安全に

Q.オフィスの温度や湿度は法律や法令で定められているというのは事実でしょうか。

宮崎さん「事実です。まず、労働契約法には『使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする(第5条)』との規定があり、使用者(雇用主)の安全配慮義務について定めています。湿度や温度を直接定めた規定ではありませんが、極端に寒い、あるいは暑い職場で従業員が体調を崩した場合、使用者が安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

次に、労働安全衛生法に基づく厚生労働省令『事務所衛生基準規則』4条1項は『事業者は、室(労働者を常時就業させる部屋)の気温が10度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない』と規定しており、違反した場合は法人と代表者に6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科される可能性があります。オフィスの室温で企業側にペナルティーが科される可能性があることに驚く人もいるかもしれませんが、事実です。

また、同規則5条3項には『事業者は、空気調和設備(空調設備)を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下および相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない』と湿度も含めて、より細かく定められています。こちらの規定はあくまで努力義務を定めたもので、違反したからといって刑事罰や過料(行政罰)が科されるわけではありません。

さらに『事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針』というものを厚生労働大臣が公表しており、同指針2の1(2)で『屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。また、屋外作業場については、夏季および冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましい』と定められています」

Q.なぜ、このような内容が法律・法令で定められているのですか。

宮崎さん「事務所衛生基準規則の根拠となる労働安全衛生法1条には『職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする』と規定されています。この文言通り、労働者が職場で安全、かつ健康に働けるよう、快適な職場環境をつくるためにこれらの法令が定められているのです」

Q.新型コロナ感染対策として、「オフィスの窓が長時間開いたままになっている」「窓が全開のため、寒い室内でコートを着て仕事をしている」という人もいるようですが、こうした環境について法的な問題はありますか。

宮崎さん「例えば、職場の室温が恒常的に10度以下となっており、体調を崩す人が続出している場合、形式的に、先述の労働契約法5条や事務所衛生基準規則4条1項に違反している状態といえます。しかしながら、新型コロナ対策を講じることも労働者の安全や健康を確保する目的なので、形式的に法律に違反しているとしても実際に処罰されたり、民事上の責任を問われたりする可能性は限りなく低いでしょう」

Q.つまり、窓全開のオフィスでの労働を余儀なくされている従業員が「寒くて仕事に集中できない」「寒さのあまり、体調を崩した」場合でも、会社側への法的ペナルティーは発生しないということでしょうか。

宮崎さん「はい。あくまで、新型コロナ対策が理由であれば、会社側にペナルティーが発生する可能性は低いと思います」

Q.とはいえ、オフィスの温度や湿度が著しく低い状態が続けば、日々の仕事への悪影響も考えられます。従業員が改善を求めても会社側が対応しない場合、どうすればよいでしょうか。

宮崎さん「労働基準監督署は、職場の安全や衛生に関することも相談に乗ってくれます。従業員側がアクションを起こしても会社側が改善に向けて動いてくれない場合、最寄りの労働基準監督署へ相談に行くことをおすすめします」

Q.オフィスの温度・湿度などの環境について、問題となった過去の事例・判例はありますか。

宮崎さん「1995年9月に食品会社の社員が過労自殺した事件があり、裁判所は作業現場が相当の高温・多湿状態となっていたことについて、会社側の安全配慮義務違反を認め、遺族に対して損害賠償するよう会社側に命じました」

(オトナンサー編集部)

Let's block ads! (Why?)


からの記事と詳細 ( コロナ対策は大事でも…職場の「換気」でさまざまな弊害、企業の法的責任は? - オトナンサー )
https://ift.tt/3cBYb9A

No comments:

Post a Comment