震災、水害、そして新型コロナウイルス感染症と、われわれはさまざまな災害に立ち向かう必要がある。過酷な災害だが、一方で守ってくれる技術もまた、IT技術を取り込んで進化している。そんな「デジタル防災」のための知識をアップデートしていく連載が始動する。
日本では、地震や水害などさまざまな災害が毎年起こっており、時折、大規模な災害が発生する。1995年1月17日に起きた、淡路島沖、明石海峡を震源として発生したM7.3の地震は、「阪神・淡路大震災」として、神戸を中心に大きな被害をもたらした。
午前5時46分という未明に発生したこともあり、倒壊した家具の下敷きになり亡くなったり、暗闇の中で避難行動が難航したりするなど被害が広がった例もあった。また、電力が回復した後で通電火災が発生するなど、都市型災害の課題が浮き彫りになった。
阪神淡路大震災以来、注目されるようになったのは、家具の倒壊防止器具や自動でブレーカーを作動させる感震ブレーカーだ。いずれもさまざまなタイプの製品が販売されているが、居住環境にあったものを使用しないと効果がなかったり、被害を拡大しまったりすることもある。
どのような製品にすべきか、決める前に一つ考えてほしいのが、「マイタイムライン」だ。
地震や水害などの災害ごとに避難指針などがあったが、居住地域や家族構成など住環境、生活環境によっては全ての人に当てはまらないことも多い。そこで、国や各自治体によって、防災対策として、自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、自ら考え命を守る避難行動のためのガイドライン、マイタイムラインが提唱されることになった。
これにより、同じ大雨という災害であっても河川に近く氾濫しやすい(ハザードマップで浸水エリアに該当する)場所に住んでいる人は、非常持ち出し袋を防水性の高いものにして早めに避難するというマイタイムラインを設定し、マンションの高層階に住んでいる人は自宅が水没する心配はないが、建物の設備が浸水してエレベーターが使えない、停電が起きるなど自宅で過ごす際の対策をとるなどのマイタイムラインを設定できる。
震災後の通電火災対策として注目されるようになった感震ブレーカーは、錘やバネをブレーカースイッチと連動させて揺れが来ると作動する簡易的な仕組みのものから、コンセントに差し込む方式のもの、センサーで設定震度を感知すると疑似漏電を発生させてブレーカーを作動させるリレー式など多様なモデルがある。
自治体によっては補助金なども出して設置を推進しており、導入を検討する企業や家庭も増えてきているが、マイタイムラインに応じた機器を選ばないと最大限の効果を得ることが難しいというわけだ。
例えば、錘式やバネ式などの簡易型は、安価で後付けもDIYできるなど手軽に導入できるが、構造がシンプル故に、夜間など明かりが必要な時に遮断されると真っ暗で避難活動ができないという問題がある。一方で夜間にほぼ人がいない倉庫などに設置するには安価で対策ができるのでコストパフォーマンスに優れている。
コンセント式は、家庭用コンセントに差し込むタイプと、既存のコンセントを置き換える埋め込み式の2種類がある。いずれもストーブやコタツなどの電熱器具を使用する前段に設置して、電気を遮断するものになる。
分電盤に設置するものは、揺れを加速度センサーで感知したらブレーカーを作動させて通電を遮断するというものになる。簡易型と異なり、例えばパナソニックの感震ブレーカーなどは、地震を検知後ブレーカー作動まで30秒の猶予があり、その間に懐中電灯を準備するなど避難準備ができるようになっている(ブレーカーごと交換、スイッチを増設など複数タイプあり)。
停電が復旧した際に倒れた家具や可燃物が電球や電熱器具に接するなどで火災が発生する「通電火災」を防ぐには、感震ブレーカーは有効だ。一方で、常に人がいる施設で即全電源が落ちるように作動するブレーカーは避難の妨げとなる場合もある。場所や災害時の避難シナリオなどに応じて適切な機器を選びたい。
災害は思いもよらない場所、時間に起こることもある。地震によって瞬時に停電となれば、時差式の感震ブレーカーも意味をなさない。
停電(電力供給がなくなったこと)を検知して作動するセンサーライトがあれば、停電時も即座に点灯して避難路を確保してくれる。
人感センサーも内蔵されたモデルもあり、普段は人感センサー作動させておけば、夜中にトイレに起きた際も自動で足元を照らしてくれ、停電時は点灯して避難の助けとなる。
センサーライトと簡易型の感震ブレーカーを組み合わせることで、コスパよく通電火災を防ぐ感震ブレーカーの設置と避難用の照明を確保することができるだろう。普段は無人の倉庫などの場合には、感震ブレーカーのみでも良いが人がいる家庭やオフィスでは、時差式の感震ブレーカーとセンサーライトなどが備わっていると安心だ。
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