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Sunday, February 16, 2020

ヤマト、セブン、花王が「SIS」で競争優位を作れたワケ - 日経ビジネス電子版

全13047文字

 これまで日本企業の多くが、日本より先を行く米国のビジネスモデルを輸入する「タイムマシン経営」に活路を見いだしてきた。だが、それで経営の本質を磨き、本当に強い企業になれるのだろうか。むしろ、技術革新への対応など過去の経営判断を振り返り、今の経営に生かす「逆・タイムマシン経営」こそが必要だ。

 経営判断を惑わす様々な罠(わな=トラップ)を、過去に遡るタイムマシンに乗って当時のメディアに流布していた言説などとともに分析することで、世間の風潮に流されない本物の価値判断力を養おう。第1章は、トラップの典型として「バズワード(定義があいまいな専門用語)」に着目する。3回目は、前回のERP(業務基幹システム)ブームの時代からさらに遡り、「SIS(戦略情報システム)」ブームを検証する。SIS活用の成功事例とされた花王、ヤマト運輸、そしてセブン‐イレブン・ジャパンの事例から、ブームに惑わされず果実をつかんだ会社は何が違ったのかを分析する。

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 前回もお話ししたように、IT分野は飛び道具トラップがあちらこちらに埋め込まれた地雷原の様相を呈しています。それだけに、ITツール導入の意思決定には経営センスの有無が如実に表れます。

 今回はタイムマシンに乗って、バブル経済に沸いた1980年代後半を訪れ、当時空前のブームとなった「SIS(戦略情報システム)」を振り返ります。ブームに踊らされずにSISを経営に生かし、競争優位に結びつけた企業に注目します。

 先進国の米国ではSISによって大きくシェアを伸ばすだけではなく、ライバルを倒産に追い込んだ会社もある。あなたの隣の会社が着々とSISに取り組み、ある日、気づいたら大きな差をつけられているかもしれない。先手必勝。出遅れは致命傷だ。

 合理化のためのコンピューター投資と違って、効果を金額で表せないだけに決断には勇気がいる。しかし、立ち止まってはいられない。経営トップであるあなたが明確な目標を定め、全社を引っ張る強力なリーダーシップを持つことが求められている。

出所:日経ビジネス1989年8月14日号 特集 「しのびよるSISの脅威 成熟時代を勝ち抜く新経営手法」

 戦略情報システム、略して「SIS」(「エスアイエス」ではなく「シス」と読む人も多かった)という言葉は、今では死語になったと言ってもよいでしょう。ITの専門家でさえ大半は「何それ?」という反応ではないでしょうか。「SIS死す」状態になって久しい今日このごろです。

 1980年代後半は、SISというキーワードが躍りまくっていた時代でした。日本経済がバブル景気に沸く中で、様々なメディアが「これからはSISの時代だ!」と喧伝(けんでん)し、経済・ビジネス雑誌は毎号決まってSISを取り上げていました。

 雑誌だけではありません。SISに関するビジネス書も数多く出版されました。そのタイトルや販売促進用の帯からは、当時のSISに対する熱気が伝わってきます。

1990年前後に刊行されたSISやネットワークに関するビジネス書の表紙(写真:杉浦泰)

マイクロプロセッサーとネットワークの登場

 1980年代後半にSISがブームになった背景には、コンピューター利用の増大という技術的な側面と、バブル景気に沸く日本企業がIT部門を自社内に構えるために積極的な投資を進めたという経営的な側面の2つがあります。

 日本企業におけるコンピューターシステムの活用の歴史を振り返っておきましょう。1980年代のコンピューター利用と、1970年代までのコンピューター利用の間には大きな溝がありました。1970年代までのコンピューターの主たる用途は文字通りの「計算」、例えば建築物の構造計算といった分野でした。1968年に三井不動産と鹿島、三井建設が東京の霞が関に新設した「霞が関ビルディング」は、日本初の超高層ビルとして建築史上の金字塔となりましたが、背景にはコンピューターの活用があります(出所:三井不動産「“霞が関ビルディング”日本のランドマークとして~50年の歩みとこれから~」)。耐震性能を解析するための複雑な計算をコンピューターに任せることで、地震に耐えうる超高層という建築業界のフロンティアを切り開きました。

 企業におけるコンピューターの使い方が大きく変わったのが、1970年代の技術革新でした。ハード面で画期的だったのは、米インテルによる「マイクロプロセッサー」の発売です。これによってコンピューターを組み込んだ製品が世の中に広まり、1980年代までに複写機やロボットなど、様々な分野でコンピューターが活用されました。

 1980年代までに事務分野で「オフィス・オートメーション(OA)」、製造分野で「ファクトリー・オートメーション(FA)」というキーワードが定着しましたが、いずれもマイクロコンピューター(マイコン)の登場によって、手軽にコンピューターを様々な機器に組み込むことができるようになったことがトリガーとなっています。

 もう1つ、1970年代から1980年代を通じてコンピューターの利用に革命をもたらしたのが、ネットワークの充実です。1980年代に電電公社がNTTとして民営化され、これに合わせて企業間ネットワーク「VAN」が整備され、情報ネットワークが急速に発展しました。

 これは今風にいえばIoT(モノのインターネット)の発想に近似しています。OA やFAの分野で様々な機器にコンピューターを埋め込み、NTTが提供するネットワークを通じて情報を本社の情報システム部に集めることができれば、これまで分散していた情報を一元的に管理し、企業経営に生かせるのではないかという発想が生まれました。

 マイコンの登場と情報ネットワークの整備によって、経営の意思決定ツールとしてコンピューターを活用できる条件がそろいました。これがSISブームの技術的な背景です。

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February 17, 2020 at 03:02AM
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