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Thursday, February 20, 2020

新型ウイルスで明らかになった中国嫌悪のさまざまな形 - BBCニュース

テッサ・ウォン、BBCニュース(シンガポール)

サミ・ヤンさんが初めて異変に気づいたのは、ベルリンでかかりつけの医師の元へ行ったときだった。ヤンさんはすぐに、診療所の中に入ることを禁じられた。

他の患者は診療所に自由に出入りしていたが、中国出身のヤンさんは、1月の寒さの中、外で待たなければならなかった。しばらくすると彼女の担当医が現れ、「個人的なことではないのですが……」と話し始めた。

「そこで医者から、『例の中国ウイルスがあるので、中国人の患者は受け入れていない』と言われた」と、ヤンさんはBBCに語った。

ヤンさんは最近、中国に渡航していなかったが、「自分が健康だと説明するチャンスも与えられなかった」という。

新型コロナウイルスによるCOVID-19が世界に広まって数週間、中国人や東アジア出身に見える人たちへの差別の報告が相次いでいる。中にはアジア諸国や、中国人中心のコミュニティーでの事例もある。

中国でこのウイルスの犠牲になった人たち、特に早期にウイルスに対する警鐘を鳴らしていた李文亮氏への同情が集まる一方、アジア人や中国人からは、ウイルスに関連した人種差別や外国人嫌悪が増加しているとの声が上がっている。

中国や中国人に対する差別は今に始まったことではない。シノフォビア(中国嫌悪)は過去数百年にわたり存在し、記録されてきた現象だ。

しかし、新型ウイルス危機の中で浮かび上がったシノフォビアのさまざまな様相は、現在の中国と世界が結ぶ複雑な関係性を示している。

「西では知識不足から、東では熟知から」

世界中でウイルスにまつわる心無い言葉が飛び交っているが、その現れ方は地域によって少しずつ違う。

欧州やアメリカ、オーストラリアなどアジア人が明らかに少数派の地域では、中国人は不衛生で非文化的だというステレオタイプがシノフォビアを加速させているようだ。

たとえば、街中で「ウイルス」と呼ばれることは日常茶飯事だ。アジア人が公共の場で避けられたり、差別的な非難にさらされたり、攻撃の標的にされることもある。

オーストラリア西オーストラリア州のピエール・ヤン州議会議員は、州都パースでアジア系の住民が「ウイルス」と呼ばれ、人種差別攻撃にあったことをフェイスブックで公表した。

ヤン氏が掲載した写真では、住宅の敷地に「ウイルスは立ち入り禁止」という文言が書かれ、車に赤いペンキがかけられている様子が見てとれる。

フランスやオーストラリアの新聞では、「黄色人種の危険」、「中国ウイルスによるパンダモニウム(パンデモニウム=伏魔殿とパンダのもじり)」「中国人の子どもは外出禁止」といった見出しが見られる。

また、ウイルスの発生源が野生動物を売る市場だったこと、コウモリがウイルスを媒介したと考えられていることから、中国人は動くものなら何でも食べるというありきたりなジョークが再燃した。

アジアでも似たようなシノフォビアのコメントが出てきているが、アジアの反中はより根深い、ある種の外国人嫌悪的な様相を示している。よくある言説は、中国人が自国にあふれ返って、地元の人々にウイルスをうつすというものだ。

シンガポールとマレーシアでは、中国人の入国を全面禁止するよう求めるオンライン署名活動に数十万人が参加。どちらの国も、渡航制限を設けた。

日本では中国人を「バイオテロリスト」と呼ぶ人たちもいる。インドネシアなどでは、中国人がイスラム教徒にウイルスを感染させようとしているという陰謀論が拡散している。

香港を拠点に中国の公共政策を学んでいるドナルド・ロウ教授は、「西側にとって中国は遠く離れた場所なので、中国に対する知識不足からシノフォビアが生まれる。一方、アジアや東南アジアのシノフォビアは、あまりに中国を熟知しているからこそのものだ」と指摘した。

アジア諸国には過去数百年にわたり、中国の影が地域紛争や歴史的な不満、中国からの移民などの形を取って落ちている。最近でも、南シナ海の領有宣言や、新疆でイスラム教徒のウイグル人の強制収容などが、イスラム教徒の多い東南アジアで怒りと疑念を巻き起こしている。

こうした地域は中国からの資金援助や投資は歓迎する一方で、地元経済への恩恵が少ないことから、中国の経済的独占や搾取について疑問の声もあがっている。

香港やシンガポールと言った中国系の多い場所でさえ、移民やアイデンティティー、中国政府による影響などへの不安感もあいまって、中国本土に対する反感が拡大している。

「尊敬と軽蔑」

現在巻き起こっているシノフォビアは、中国政府の対応が原因だとみる向きもある。これには現在のウイルス対策に加え、近年のグローバル社会での振る舞いも含まれている。

ロウ教授は、中国人に対するよくある態度は「尊敬と軽蔑」の入り混じったものだと指摘した。

中国の新型ウイルスへの対応についても、「数日で病院を建設するなど、中国人の能力に対する称賛の声がある一方で、野生動物の取引を制御できない、機能する透明性を維持できないことへの軽蔑の念がある」という。

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中国当局は、COVID-19についての初期報告や封じ込めが遅かったことを認めている。また、ウイルスへの警戒を呼びかけたことで警察当局の捜査を受けた李医師への対応について攻撃を浴びている。

習近平国家主席はかねて、強くて自信に満ちた中国像を打ち出そうとしている。根底にあるのは、国際社会で責任感のある立場に立ちながら、世界中に数十億ドルもを投資するというメッセージだ。

しかし一方で、その国力を誇示することにも躊躇(ちゅうちょ)しない。これは、米中貿易戦争や広範囲にわたるスパイ活動の証拠、領土問題などについて、国営メディアが繰り広げている厳しい論調からも分かる通りだ。

「中国は愛されたいと同時に、恐れられたいとも思っている」とロウ教授は説明する。

中国人が豊かになったことで、これまでにない勢いで中国からの観光客や留学生が増加し、世界中のさまざまな地域で目に付くようになった。

その数の多さと散発する不品行の報告によって、不作法な中国人観光客、あるいは富をひけらかす中国人留学生というステレオタイプが生まれた。

もちろん世界中がこのような、西欧やアメリカ、アジアで目にする中国への疑念を持っているわけではない。ピュー研究所の調査によると、南米やアフリカ、東欧では中国人に対する見方はもっと前向きなものだという。

中国政府や一部の研究者は、シノフォビアには、それによって政治的な恩恵を受けられる競合相手に責任があると指摘している。

香港科技大学のバリー・ソートマン教授は、近年、特にトランプ政権になってから、アメリカで大量の反中論が生まれていると指摘した。

そもそも、アメリカには長いシノフォビアの歴史がある。1882年には、ゴールドラッシュによって始まった中国人労働者の移民を防止するために中国人排斥法が制定されたほどだ。現在巻き起こっているシノフォビアは、アメリカや世界各国で盛り上がっている移民排斥主義にもその一端があるとソートマン教授は言う。

「中国は今やアメリカの覇権を脅かすと目されており、中国政府のあらゆる行いが激しく非難されている。結果として、世界中の人々がそのメッセージを取り上げている。これはアジアと同様、歴史的に刻まれたシノフォビアの上に成り立っている」

「弱っている時に攻撃する」

中国は、弱って倒れている国民に対する攻撃を受け入れているわけではない。

ここ数週間、中国の国営メディアからは迫害や人種差別を厳しく非難する社説が発せられている。英語で書かれたこうした記事は、国外の視聴者を狙ったものだ。

また、国際メディアによる中国政府のウイルス対応を批判する記事についても、一部は受け入れられているものの、問題提起を行っている。

多くは誤報である、あるいは中国に対する不公平な迫害だと主張するもので、国営放送・中国環球電視網(CGTN)の劉欣アナウンサーは、「中国が弱っている時に攻撃しないでほしい」と訴えた。

また政府も、「不必要な」中国人に対する渡航禁止措置によって、「恐怖を拡散させている」と、アメリカを含む各国を批判している。

新型ウイルス流行に収束の見通しがない中、中国人やアジア人に対する差別への不安や絶望は深まっている。

ベルリン在住のヤンさんは「怖い思いをしている」と語り、向こう数週間は外出を控えようと考えていると話した。

ヤンさんを怖がらせているのは、診療所でのできごとだけではない。アジア系ドイツ人の友人が鉄道駅で嫌がらせを受けたり、中国人女性が帰宅途中に攻撃され負傷した事件なども影響している。この事件は、ベルリン警察が人種差別事件に認定した。ある女性は「ウイルス」と呼ばれ、それに反抗したら暴行を受けたと、中国のソーシャルメディアに書き込んだ。

「誰かにウイルスと呼ばれても争いにはしたくない。彼らは新聞で読んだことしか知らないし、その考えを変えることはできない」とヤンさんは話す。

「私がビザ(査証)を見せてドイツの永住権を持っていると言っても気にしないだろう。彼らが見ているのは、私の顔だけなのだから」

(英語記事 How a virus reveals the many ways China is feared

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