Pages

Sunday, January 15, 2023

日本のIT産業なんて要らない、コンピューターメーカーの「残りかす」こそ重要だ - ITpro

mungkinbelum.blogspot.com

全6107文字

 世の中には、多くの人がよく知らないままに何となく必要だと思っているが、実は大して重要ではないものが存在する。最たるものが日本のIT産業だ。「米国に少しでも対抗できるようにIT産業を維持強化しないと、日本の国際競争力に関わる」などという議論があると承知しているが、全く問題ない。世界を見渡してみるとよい。それで困っている国がどこにある。何を必死になっているのか。

 「新年早々、また『人月商売のIT業界は無用』なんて話を書こうとしているな」と早合点する読者がいるかと思うが、それは少し違う。もちろん私は日ごろから、SIerを頂点とする人月商売のIT業界は滅ぶべしと暴論しているが、今回はもっと範囲が広い。だから記事の冒頭で「日本のIT産業」と書いた。そもそも人月商売のIT業界のことを書くのなら、以前ITスタートアップ企業の人から「一緒にするな」と怒られたので、きちんとそう記すようにしている。

 さて本論だが、政治家や官僚、そしてまさに人月商売のIT業界の親玉である大手SIerの経営者らは「IT産業の優劣が日本の国際競争力を決める」なんて思い込んでいるようだが、それは単なる妄想だ。確かに米国のIT産業は強大で、米国の競争力の源泉でもある。シリコンバレーを中心に次から次へと有力なスタートアップが登場し、一気に巨大企業へと成長する。米国のIT産業の底力はもう目まいがするほどだ。だから、米国とガチンコ勝負は無理にしても、日本もIT産業を発展させないといけないと焦るわけだ。

 だが、記事の冒頭で書いたように、一度冷静になって世界を見渡したほうがよいぞ。例えば欧州はどうか。企業としてはドイツを代表する巨大企業と言ってもよいSAPが目立つが、欧州各国に日本のような市場規模を持つIT産業が存在するだろうか。欧州は大昔のメインフレームの時代から、日本よりも早くIBMなど米国のITベンダーに市場を席巻されてしまったが、その結果、経済全般の国際競争力を落としただろうか。そんなことはないよね。

 要するに、そういうことだ。もともと国際競争力のなかった産業が滅びてしも、国全体からすると大した問題ではない。日本のIT産業はメインフレームの時代には多少なりとも競争力があったが、今ではすっかり落ちぶれてしまった。真に競争力のある自動車産業がEV(電気自動車)化の流れに乗り遅れて、家電産業に続いて没落しては大変なことになるが、今の日本のIT産業なら滅びてしまっても大ごとにはならないはずだ。

 さらに言えば、市場規模では勝るIT産業を持つ日本のほうが、欧州諸国よりもデジタル化で遅れているのはどうしたことだろうね。何せ日本は自他共に認める「IT後進国」。そのせいもあって、他の先進国に比べ生産性は断トツに低い。それどころか、これまでまともなIT産業が存在しなかった新興国や発展途上国も、経済や社会のデジタル化で日本を飛び越えていく。この現実を直視すれば、「IT産業を維持強化しないと、日本の国際競争力に関わる」などという議論のむなしさが分かるはずだ。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 日本のIT産業なんて要らない、コンピューターメーカーの「残りかす」こそ重要だ - ITpro )
https://ift.tt/1zy7uBV

No comments:

Post a Comment