通常のコンピューターの計算能力をはるかにしのぐとされる量子コンピューター。さまざまな分野への活用が期待されるが、実用化にはまだ多くの課題がある。それを解決する新たな装置の開発が国内で進んでいる。どんな装置なのか。
「これが『究極のコンピューター』です」
理化学研究所(埼玉県和光市)で8月にあった、新たな量子コンピューターの実験室の報道公開。理研チームリーダーを務める古澤明・東京大教授は力を込めた。
動物実験室を改装したという300平方メートルの部屋に、ガラスケースの中に入ったお盆1枚分くらいの大きさの装置があった。ケーブルや機材をつないだシンプルなつくりだ。一般的な量子コンピューターはいずれも専用のケースに入った大きなもので、違いが際立つ。これが「究極」なのか。
重ね合わせで一度に計算
コンピューターは0か1の値を取るビットを使って計算する。だが電子や光など、粒子と波の性質を併せ持つ量子は、0と1の値を同時に取れる「重ね合わせ」という性質がある。これをビット(量子ビット)に使うのが量子コンピューターだ。
例えば2ビットの場合、00、01、10、11の4通りの状態がある。通常のコンピューターは一つずつ処理するが、量子コンピューターなら同時に扱える。n個の量子ビットがあれば、2のn乗通りの状態が一度に処理できるのだ。
米グーグルやIBMなどで開発が進む量子コンピューターの主流は、量子ビットに電子を使う方法だ。極低温で電気抵抗がゼロになる超電導を利用している。
しかし課題もある。真空で極低温を保つ必要があり、装置を大きくして量子ビットの数を増やすのが難しい。さらに外部の衝撃に弱く、寿命も1万分の1秒程度と非常に不安定だ。量子ビットが壊れると計算に誤りが起きてしまう。
高速化や誤り訂正のためには量子ビット数を増やさなければならないが、多くの量子ビットを長時間、安定させることが技術的に難しいのだ。
これを解決しようとしているのが、古澤さんが開発する量子コンピューターだ。光の粒である光子を量子ビットに使うという。
その秘密は「量子テレポーテーション」という根幹技術にある。二つの光子が離れていても瞬時に情報が伝わる、ミクロの世界の不思議な現象だ。古澤さんが1998年に世界で初めて実験に成功し、ノーベル物理学賞の候補とされる。
仕組みは次のようなものだ。
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