「甲子園でPCが組めるんだって!」
というまことしやかな話を耳にしたのは、2021年の6月だ。「なんで甲子園なの?」「どうやって組み立てるの?」「え、マウスコンピューターが出展?」と、はてなマークが飛び交う会話が当時、編集部内で沸き起こった。
これはこの目で確かめるしかあるまいと決意をしたものの、あいにくの新型コロナウイルスまん延ということもあり、動くに動けずという状態が続いていた。しかし、ついに行動制限が緩和され、運よく取材の許可が出たこともあり、早速新幹線に飛び乗った。
その「キッザニア甲子園」内にあるマウスコンピューターの「パソコン工場」パビリオンには、予想通りな所もあり、予想外な所もある非常にユニークな世界が広がっていた。
キッザニア甲子園って知っていますか?
このキッザニア甲子園は、阪神電車「甲子園」駅から徒歩5分の好立地にある「ららぽーと甲子園」(2004年オープン)に、増床する形で2009年に開設されたもので、1階と2階は駐車場、その上にキッザニア甲子園が入り、延床面積は1万4935平方mにも及ぶ。
「アーバンドッグ ららぽーと豊洲」(東京都江東区)の「キッザニア東京」(2006年オープン)に続く、国内2つ目の施設に当たり、子どもたちが職業体験を通じて楽しみながら社会の仕組みを学べる「こどもが主役の街」がキッザニアなのだ。
そのため、キッザニアを既に体験している人には釈迦(しゃか)に説法だが、キッザニア内のパビリオンは3歳〜15歳の子ども(キッザニアン)しか体験できず、付き添いの保護者は一部のパビリオンを除き、指をくわえて子どもたちを眺めているか、保護者ラウンジや飲食スペースでだべるしかない。
キッザニア甲子園には1階と2階で約60のパビリオンが点在しており、その中の1つにマウスコンピューターの「パソコン工場」パビリオンがある。同社がキッザニア甲子園のオフィシャルスポンサーとなったのが2021年7月で、ここから“PCの組み立て”を体験したキッザニアンが、日々巣立っていく形だ。
キッザニアFAQコーナー
・キッザニアって何?
3歳〜15歳の子ども(キッザニアン)のための「街」です。現在、キッザニア東京とキッザニア甲子園があり、2022年7月31日はキッザニア福岡がオープン予定です。
・どうやって入るの?
第1部(午前9時〜午後3時)と第2部(午後4時〜午後9時)があり、料金やプランはこちらのページを参照してください。
・キッザニアで何ができるの?
キッザニアンが好きな仕事を選んで働いたり、働いてもらった給料を使ったり、給料を銀行に預けたりできます。
・働くと何がもらえるの?
各パビリオンの体験が終わると成果物がもらえる他に、給料として「キッゾ」(通常、5または8キッゾを支給)がもらえ、対応パビリオンで使ったり、銀行で預金できたりします。また、50キッゾのトラベラーズチェックを交換することもできます。
・誕生月に行くと何かいいことがあるの?
誕生月のキッザニアンは、入場後にスタッフに声を掛けてバースデーカードをもらうと、キッゾを支払うパビリオンを無料で体験できたり(一部パビリオンを除く)、バースデーシールなどのシークレットプレゼントをもらえたりします。
パソコン工場パビリオンで飛び交うあいさつ
目指すパソコン工場パビリオンは、劇場の前にある中央広場に面した2階にある。黄色い看板におなじみのチーズロゴが目印だ。階段を上って道を折れると、すぐにお目当てのブースがある。まずはパビリオンのスーパーバイザー(係員)に声を掛けて受付を済ませ、目の前にあるベンチに座ってスタンバイだ。
キッザニアンはパソコン工場スタッフとなり、オーダーに合わせたパーツを使って1台のデスクトップPCを組み立てることになる。所要時間は約40〜50分、報酬は8キッゾで、1回に体験できるのは6人が上限だ。
PC USERの読者はご存じの人も多いと思うが、マウスコンピューターは毎年夏に自社工場の飯山事業所(長野県飯山市)で「PC組み立て教室」を開催し、恒例行事として10年以上も取り組んでいる。しかし、新型コロナウイルスの影響を受けて近年は実施できておらず、2022年も残念ながら見送りが決まっているという。
この本格的な組み立て教室を、このコンパクトなパビリオン内でどのように実現するのか、しかも通常は半日がかりのものを50分でどのようにまとめるのだろうかと余計な不安が頭をよぎるが、まずはキッザニアンと一緒に確かめるしかあるまい。
キッザニアンは、ブースに入る前に黄色と黒のツートーンにマウスロゴが付いたパーカーを身につけ、スーパーバイザーの合図とともにブースへ入場する。
スーパーバイザーの日本語での自己紹介が終わり、参加者それぞれがこの体験に期待することを述べた後、早速組み立てかと思いきや、まずはPCに関する知識を高めるべく、PCの歴史や歩みがスーパーバイザーのなめらかな説明で展開される。のんきによそ見をしていると、スーパーバイザーから指名されるので要注意だ。
一通りの講義が終わると、教師卓にあるクリエイター向けデスクトップPC「DAIV」を例にしてPCケース内のパーツを確かめたり、動いているゲームのデモなどを見せられたりする。今回参加したキッザニアン6人のうち、PCの中身を見たことあると答えたのは1人だけだった。
ここでスーパーバイザーがCPUやGPU、メモリやストレージ、そしてマザーボードの各パーツを1つ1つ手に取り、各パーツの役割を細かくガイドする。キッザニアンのほとんどが、興味深そうにパーツを眺めているのがほほえましい。
オーダーシートを手渡され作業開始 まさかの水冷モデル?
続いて、待ちに待ったPCの組み立て工程に移る。
スーパーバイザーからキッザニアン1人1人に、注文内容が書かれたオーダーシートが配られ、パーツのピックアップ作業のスタートだ。パーツのピックアップは実に簡単で、オーダーシートにあるバーコードを読み取ると棚のランプが光り、該当するパーツを集める。
オーダーシートを見ると、同社のゲーミングPC「G-Tune」のスリムデスクトップモデルを組み立てるようだ。ちなみに、このモデルはキッザニア甲子園スペシャルカスタマイズ版となっているという。
ピックアップが完了したら、作業机に移って集めたパーツをPC本体に組み込んでいく。マザーボードや電源ユニットはあらかじめケースに装着済みで、目の前にあるモニターに作業工程が表示される。
該当する部分が赤く光ったり囲まれたりして表示されるため、実に分かりやすい。もちろん、1つ1つの工程はスーパーバイザーのかけ声に合わせて進む。焦りは禁物だ。
クリアパネル仕様になったサイドカバーを開けて引き出しにしまうと、各自が椅子に座ってパーツの組み込み作業が本格化する。この間もスーパーバイザーが丁寧に説明し、迷ったり詰まっていたりするキッザニアンには手取り足取りのサポートが入るので安心だ。
最初に各ケーブルなどをケース外に引き回して、パーツを組み入れやすいようにマザーボード周辺をすっきりとさせるのだが、スーパーバイザーのげきが早速飛ぶ。
「次はCPUクーラーを脇によけます!」
あわててカメラのレンズ越しにCPUクーラーを見ると、何と2本の管が伸びた水冷ヘッドだったのには驚きだ。自作デビュー(疑似体験とはいえ)のキッザニアンにいきなり水冷とは、マウスコンピューターもなかなかヘヴィだぜ……と心でつぶやきつつ、CPUをチェックするとCeleron G5905(開発コード名:Comet Lake、2コア2スレッド、3.5GHz)だった。
ソケットはLGA1200で、キッザニアンは慣れない手つきでレバーを上げてCPUを突っ込んでいく。スーパーバイザーから「両手を使って!」と的確な指示が飛ぶのはもちろん、工程が1つ終わったり、無事パーツが装着されたりするごとに、
「グッジョブ!」「ナイス!」
という合いの手が、スーパーバイザーの口から続々と飛び出す。この辺りの絶妙な間合いは、さすがプロだぜとうなってしまう程だ。
2枚のメモリやロープロファイルのグラフィックスカードを取り付けてネジを回すと、次はいよいよCPUにグリスを塗る工程となる。スポイトで透明な液状グリスを吸い取り、CPUに慎重に垂らしていく。
続いては、先ほど脇によけたケーブル類の取り付けだ。カードリーダーなどのケーブルなどを順次接続していく。
興味深いのは、主要な端子がRCAタイプに変更されていることだ。これは作業効率やパーツの故障を防ぐための措置と思われるが、分かりやすさはピカイチだろう。
「レディ!」のかけ声に合わせて起動チェック
組み込み作業の最後は、Serial ATAタイプのSSDをセットする工程だ。あらかじめ用意されたレールに沿ってSSDをはめ込み、結束ケーブルでまとめることで終了となる。
スーパーバイザーの「OK!」「サンキュー」の声を聞きつつ、引き出しにしまったサイドパネルをドライバーでネジを締め、椅子をしまえば、ついに起動チェックと相成る。
電源ケーブルをグッと差し込み、ディスプレイケーブルを接続してから横置き状態のケースを縦置きにして、スーパーバイザーの合図を待つ。スーパーバイザーの
「レディ!」
のかけ声に続いて、キッザニアンが一斉に電源ボタンを押す。緊張の一瞬となるが、スーパーバイザーから「BIOS画面が表示されているか、ケースファンが回転しているかを確認して!」の声に反応して全員が組み上げたPCをチェックする。
スーパーバイザーの「画面が表示された人!」という威勢のいい声に反して、6人のキッザニアンが照れながらそっと手を挙げていた姿が目に焼き付いた。
作業はまだまだ続く。
起動チェックが完了したら、バーコードシールをケース下部に貼り、オーダーシートのチェック欄にレ点を入れて各自がサイン(署名)を済ませると、オーダーシートはスーパーバイザーに回収される。ここで作業机に別れを告げて、キッザニアンは整列して最終講義を受ける。
スーパーバイザーがキッザニアンに感想を聞く振り返りでは、多くが「組み立てが楽しかった/おもしろかった」という中で、「作業が難しかった」という声もあった。みな、無事に動作してホッとしたというところだろう。
最後にスーパーバイザーが「全員できてよかった! 全部できた! 説明を聞いてくれて良かった! 初めての仕事なのに、うまくいって素晴らしい!!」とキッザニアンをねぎらってパソコン工場パビリオンでの仕事体験は幕を閉じる。
と思いきや、まだ続きがあった。
ブースの奥にあるベルトコンベアに、キッザニアンが組み上げた6台のPCが並べられ、部屋の奥に出荷されるまでの工程が目の前で行われるのだ。コンパクトなブースなのに、よく練られているなと感心してしまう。
この儀式が終わると、スーパーバイザーから報酬の8キッゾと、成果物としてオーダーシートが各キッザニアンの手に渡る。
PCを身近に感じ親しみを覚えてもらう第1歩に最適
ここまでで約45分が経過していたが、想像以上に濃密な時間だったように思う。やはり、組み上げた後のキッザニアンの笑顔も印象的だった。このパビリオンでの体験が覚めやらぬうちに、ぜひ飯山工場での組み立て教室へステップアップしてもらいたいと考えてしまうが、今しばらくの辛抱だ。
世の中では、オンライン授業やハイブリッドワーク、ビデオ会議といった形で、改めてPCの大切さや、デジタルライフのカギを握る存在として注目が集まっている。普段、何気なく使っているPC、特にキッザニアンは親や学校などが用意したモデルを利用する場合が多いだろう。
簡易な形とはいえ、改めて自分がゲームやWebブラウズ、授業などで使っているPCの仕組みや中身をリアルに学べ、1台のPCを組み上げたことは何かしらの自信や体験につながるはずだ。
このことこそ、「人とパソコンの距離を近づける会社」を目指すマウスコンピューターならではの取り組みであり、PCを身近に感じ、親しみを覚えてもらう第1歩としては最適だろう。
願わくは、キッザニア甲子園だけでなく、ぜひ東京や新たにオープンする福岡でもパソコン工場パビリオンを開設してほしいと思ってしまうのは、筆者だけではないはずだ。
キッザニア甲子園 パソコン工場パビリオン
所在地:〒663-8178 兵庫県西宮市甲子園八番町1-100 ららぽーと甲子園
営業時間:第1部(午前9時〜午後3時)/第2部(午後4時〜午後9時)
定休日:不定休
駐車場:ららぽーと甲子園の駐車場を利用
関連リンク
からの記事と詳細 ( 甲子園でデスクトップPCを自作? マウスコンピューターのパソコン工場で感じた驚き(1/3 ページ) - ITmedia PC USER - ITmedia PC USER )
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