■膨大な走行試験が必要な運転支援技術や自動運転技術の開発に活用
●特殊で危険な試験、稀な試験などを実車試験の代わりに再現
ドライビングシミュレータは、さまざまな道路状況や運転条件下でクルマがどのような挙動をしながら走行するのか、またドライバーが走行中にどのような反応をしながら運転をするのかをシミュレートする装置です。
運転支援や自動運転技術の開発にも活用されているドライビングシミュレータについて、解説していきます。
●ドライビングシミュレータの目的
ドライビングシミュレータは、再現しづらい特殊な運転条件や危険をともなうような運転条件でのクルマとドライバーの挙動を解析するために用いられます。
実車試験に比べて、運転条件の設定やその再現、ドライバーの状態解析が容易であり、シミュレータの精度が向上した現在、多くのメーカーが活用しています。
具体的な用途としては、2つに大別されます。
・クルマの運動に関する研究開発
クルマの挙動や操縦安定性など、また特殊な運転条件や危険な条件での運動性能を解析し、設計や開発の効率化を図ります。最近は、運転支援や自動運転技術の開発のために、メーカーが積極的に導入しています。
・人間―自動車系の研究開発
操作系/表示系とドライバーの操作分析による運転席レイアウトの最適化など、さまざまな環境下や運転条件での人間工学関連の試験が行えます。
●ドライビングシミュレータの構成
ドライビングシミュレータには、簡易的な小規模なものから大規模なものまで用途によって種々のタイプがあります。基本的な構成は、視野模擬装置、音響模擬装置、操縦感覚模擬装置、運動感覚模擬装置、制御部から成ります。
・視野模擬装置
ドライバーがウインドウを通して見る車外の景色(道路、背景、障害物、先行車、対向車など)を表示する装置です。視野画像は、車両の運動情報から50~100ms程度で更新します。
・音響模擬装置
エンジン音やタイヤノイズ、風切り音などの実車データベースに加工することで、運転状態に応じて実車の騒音を模擬してドライバーに速度感を与えます。
・操縦感覚模擬装置
ハンドル反力、計器類の表示や動きなどを模擬する装置です。ハンドル反力をモーターで与えて操縦感覚を、メーター類の動きでスピード感を作り出します。またアクセルやブレーキペダルの踏力や反力も実車に近い状態にします。
・運動感覚模擬装置
車両運動から慣性力や振動を模擬する装置です。ドライバーが座る運転席や視野模擬装置を動かして、その動きによって車両の加速度を演出します。
・制御部
ドライバーの運転操作(アクセルペダルとブレーキペダルの踏み込み量、ステアリング操作、ギヤ段など)を入力として、車両の運動を演算します。
この演算結果をもとに、すべての模擬装置をリアルタイム作動させて再現します。
●ドライビングシミュレータにも限界がある
実車試験に比べると、安全で再現性が高い、運転者観察が容易、条件設定やデータの取得と解析が容易という大きなメリットがあり、試験工数や開発時間など開発効率の向上とコスト低減に大きく貢献します。
ただし、実車の運動を模擬することには限界があります。運転操作の違和感がある、ドライバーの心理状態(緊張感や安心感など)が実車とは異なることを考慮する必要があります。
運転支援や自動運転技術の普及にともない、これまで以上に実車試験でさまざまな性能や機能を検証する必要性に迫られています。
路上やテストコースではできる試験に限界があるので、今後さらにドライビングシミュレーションの活用が進むと思われます。
(Mr.ソラン)
カテゴリー : ニュース・新車, テクノロジー, ビジネス・テクノロジー, 自動車用語辞典
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July 16, 2020 at 04:03PM
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