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Sunday, January 23, 2022

量子コンピューター、どんな問題が解決できる? | 日経クロステック(xTECH) - ITpro

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全1212文字

 量子コンピューターは、従来のコンピューターでは解けなかった問題を解ける可能性があります。例えば地球温暖化がその一つです。

 具体的に説明しましょう。最近になってクリーンな燃料としてアンモニアが注目を集めています1)。燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さないなど、地球に優しい特徴がいくつもあるためです。ところが現状のアンモニアには根深い問題が残っています。そもそも、その製造工程自体が地球環境に多大な負担をかけているのです。

 アンモニアは肥料などの原料として大量に造られており、その生産には地球全体で消費されるエネルギーの1~2%を要するとされます。製造時に排出される二酸化炭素の量も、人類の排出量の1~3%に及ぶそうです1)、2)。1~3%と書くとほんのわずかに見えますが、世界の二酸化炭素排出量のうち日本が占める割合は2018年で3.2%とされますから3)、実際にはとてつもない数字です。

 環境負荷の主な原因は、「ハーバーボッシュ法」と呼ばれる現在主流の製造方法です。400~600℃もの高い温度、100~300気圧もの高い圧力が必要なため、たくさんのエネルギーが投入されます。原料の天然ガスから二酸化炭素が発生するといった難点もあります。100年以上前に登場した非常に古い製法であり、環境に優しい代替手法の研究が活発なのにもかかわらず1)、2)、いまだに主役の座を譲っていません。

 この問題を根本的に解くヒントは自然にありそうです。以前から、マメ科の植物の根などに存在する酵素(ニトロゲナーゼ)に、常温・常圧でアンモニアの合成を促す働きがあることが知られていました。これと同様な反応を工業的に実現できれば、製造にかかるエネルギーは大幅に減るはずです。実際、この酵素にヒントを得た製造手法を東京大学が開発しています4)

 ところが、多くの研究者の行く手にはひときわ高いハードルがそびえています。この酵素が関わる反応の仕組みが恐ろしく複雑で、十分な解明がなされていないことです。極論すれば、具体的にどのような反応が進行しているのか不透明なまま、間接的な証拠をもとに手探りで開発を進めるしかないのです。このことは、アンモニアの合成に限らず、多くの化学反応に共通の足かせになっています。

 ここで量子コンピューターの出番です。スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH)とマイクロソフトの研究者は、量子コンピューターを用いることでアンモニアを作る化学反応を極めて精緻にシミュレーションする可能性を示しました5)。実際の反応が電子などの微細なレベルでどのように進行しているかを、高い精度で再現できるということです。

 いうなれば量子コンピューターは、自然が秘して明かさなかった神秘の本質をうかがい知る力を人類にもたらすのです。この能力は、化学反応の理論はもちろん、新しい製法や材料の開発を大いに促進すると見込まれています。

次回の一問一答

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