THE BEAT GARDENが通算4枚目のアルバム「Bell」をリリースした。
韓国ドラマ「梨泰院クラス」をリメイクしたテレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」の挿入歌「Start Over」を歌い、お茶の間でも話題を集めたTHE BEAT GARDEN。勢いに乗る彼らにとっておよそ2年ぶりのアルバムとなる「Bell」では「Start Over」に加え、橋口洋平(wacci)が提供した切ない失恋ソング「あかり」や、80KIDZとのコラボレーションによるエレクトロロックチューン「High Again」、ドラマ「自転車屋さんの高橋くん」のオープニングテーマ「初めて恋をするように」によって、THE BEAT GARDENが持つバラエティ豊かなポップセンスや息の合ったコーラスワークを余すところなく表現。「Start Over」でTHE BEAT GARDENのことを知ったリスナーも、そして彼らをデビュー時から支えてきたBeemer(THE BEAT GARDENファンの呼称)も楽しめる内容に仕上がっている。そんな本作の中で、コロナ禍で再確認したBeemerとの絆をどう表現しようとしたのか。3人に話を聞いた。
最終ページでは、「幸せを呼ぶ」「幸せの始まり」というメッセージが込められた「Bell」にちなんだミニ企画を展開。メンバーそれぞれが幸福を感じるものを、コメントと写真で紹介する。
取材・文 / 黒田隆憲撮影 / 星野耕作
「Start Over」にふさわしいアーティストでありたい
──まずは、昨年8月にリリースした「六本木クラス」の挿入歌「Start Over」の、その後の反響についてお聞かせください(参照:THE BEAT GARDEN「六本木クラス」挿入歌とともに、愚直に歩んできた10年のその先へ)。
U ちょうど今、リリースイベントで全国を回らせていただいているのですが、イベント開始前から「Start Over」が会場で流れていて、それを聴いて通りすがりの人たちが立ち止まってくれることも多く、僕らのスタッフも喜んでくれています。
MASATO 僕ら自身もこの曲にふさわしいアーティストでありたいと襟を正す思いがありますね。
REI 「Start Over」をきっかけに、THE BEAT GARDENを知ってくださった人たちにも、僕らのオリジナル曲がちゃんと届いてきている実感があって。それがすごくうれしいですし、ありがたいことだなと思っています。
──その「Start Over」を含む通算4枚目のアルバム「Bell」がリリースされます。タイトルの由来を教えてもらえますか?
U ベルって、誰かが揺らしたり叩いたりしないと音が出ないじゃないですか。THE BEAT GARDENの音楽も、誰かに触れてもらわないと存在する意味がないという点では同じだと思っていて。THE BEAT GARDENのことや、僕らが作り出す音楽を、1人ひとりが“意思”を持って選んでくれないと、知ってもらったり聴いてもらったりできないと思うんですね。そのことをふと思い付き、“ベル”という単語を調べてみたところ、「幸せを呼ぶ」「幸せの始まり」という意味があることがわかって。これはアルバムタイトルにぴったりだなと思って付けることにしました。
──なるほど。アルバムは「Start Over」で始まり、2曲目には会いたくても会えないコロナ禍での葛藤を歌った楽曲「心音」が収録されます。
U この曲は、昨年の11月くらいから作り始めました。その頃になると「きっと来年にはマスクを外すこともできるだろう」といった声もちらほらと聞かれるようになり、コロナ禍もそろそろ収束へ向かっていくだろうという雰囲気が、世の中全体に漂っていました。確かこの曲は、アルバム制作の中で4曲目くらいに着手したんだったかな。やっぱり今、自分が思っていること、この期間の出来事やこれからのことについて、まったく触れないのも違和感があったんですよね。取り立ててシリアスな歌詞を作るつもりはなかったけど、意思表示として今一番言いたいことを「心音」に詰め込むことにしました。
それぞれの恋愛観
──3曲目の「あかり」は、かねてよりwacciのファンだったUさんが直接、橋口洋平さんに楽曲提供のオファーをしたそうですね。
U はい。「CDTV」で共演したときにオファーさせていただきました。その前にもTBSさんの番組で、橋口さんとちょっと話す機会があったのですが、ボーカリストとして発声法についての話など、すごく丁寧に教えてくださって。wacciの楽曲って、橋口さんが詞先で作っていると聞いたんですけど、僕はいつもメロディを作ってからそこに言葉を当てはめているので、もし橋口さんがTHE BEAT GARDENのために曲を書いてくれて、それを3人で歌ったらどんな感じになるんだろうとすごく興味があったし、橋口さんの曲を歌ってみたいと思ってその場で伝えたところ、快諾していただけました。
──歌詞のテーマなどは、THE BEAT GARDEN側から橋口さんにリクエストしたのですか?
U 橋口さんとはZoomで打ち合わせをして、そのときは「とにかく悲しい失恋の歌を作ってほしいです」とだけお願いしました。どちらか一方が悪いのではなく、それでもどうすることもできない2人の気持ち……そういうものを歌詞に込めてもらえたらすごくうれしいですと。それ以外は橋口さんにお任せでした。
──別れた恋人のことを、彼女の誕生日に思い出してメールするという、確かに橋口さんらしさ全開の歌詞ですよね。
U 切ないですよね。僕自身は元カノの誕生日を思い出すこととか、残念ながらなくて(笑)。しっかりピリオドを打ってお別れするタイプなのですが、この曲の“僕”の気持ち、「僕らの恋を 吹き消したあの瞬間からずっと 明かりのつけ方も忘れたまま」というところの切なさは、心をキュッと締め付けるものがあって。共感がまったくできなかったわけじゃないんですよね。REIくんはきっとこういう経験あるよね?(笑)
REI いやいや(笑)。僕も別れてから思い出すことはないです。
MASATO 僕はありますね(笑)。逆に自分の誕生日を覚えられていると複雑な気持ちになるかも。だって、自分の気持ちは自分で処理できるけど、相手の気持ちが垣間見えてしまったときに、それを僕がどうにかすることはできないじゃないですか。そういう意味では、過去を振り返って切なくなるよりも、相手にその思いが残っていることを知るほうがつらいなって思います。自分から別れを告げたとしたらなおさらですよね。
U 確かにそれはつらいね。あと、これは橋口さんに確かめてみないとわからないことですが、この曲のサビって「僕らの恋を吹き消したあの瞬間からずっと」と歌っていて、要するに、恋を終わらせることをケーキのロウソクを吹き消すことにかけていると思うんですけど、そのあとに続くコーラスも「フー」っていう、ロウソクの火を吹き消す音になっているんです。これってつまり「この恋を自分自身も終わらせなきゃ」っていう“僕”の思いを表しているんじゃないかと勝手に解釈しているんですよね。橋口さんにも「そうだよ」って言ってもらいたい(笑)。そんな妄想でいっぱいになるくらい素敵な曲をいただきました。
REI ちなみにこの曲は、すごく丁寧に気持ちを込めて歌う練習をしてからレコーディングに臨んだのですが、実際に歌ってみるとちょっと重すぎるというか。トゥーマッチになってしまったんです。こういう曲こそビブラートなどもかけず、あえて淡々と歌ってみることによって、聴いた人たちも感情移入しやすくなることを学びました。感情をすべて込めることが“伝わる”こととは限らないというか。削ぎ落とすからこそ、伝わりやすくなることもあるなと。
“初めて恋をするよう”な気持ちでメンバーと接する
──「初めて恋をするように」は、ドラマ「自転車屋さんの高橋くん」のオープニングテーマです(参照:THE BEAT GARDEN×鈴木伸之が初対面!「自転車屋さんの高橋くん」OP&EDテーマの魅力語る)。どのように歌詞の世界観をドラマに寄せていったんでしょうか?
U 内田理央さん演じるパン子ちゃんは、すごくかわいらしいのに自信がなくて。逆に鈴木伸之さん演じる高橋くんは、彼女に対する思いをストレートに伝えて引っ張っていくようなタイプ。恋人同士って、付き合って一緒にいる時間が増えるにつれて、相手が自分で短所だと思い込んでいる部分こそ愛おしく思えたり、かわいいなと思えたりする瞬間があるなと思うんですよ。そうやって、何度も同じ人に“恋をし直す”瞬間を切り取って歌にできたらいいなという気持ちで書いた曲です。
──“初めて恋をするように”相手と向き合うのは、常に相手に対して関心を寄せていないと難しいですよね。
U 確かにそうですね。この曲は恋愛ソングですけど、考えてみればTHE BEAT GARDENの関係性にも通じる部分があるかもしれない。僕らは出会ってもう11年なんですけど、一緒にいて全然飽きないんですよね。僕がMASATOとREIくんのこと「すごいな」と思うのは、11年間ずっと一定の距離感を保っているところ。僕は相手に対してグッと距離を詰めてしまいがちなんですよ。土足で人の心に入っていくというか(笑)、それで嫌われてしまっても仕方ないと思っているし、それを理解してもらえないとこの先やっていけないと思っているんですけど、2人はもっと人付き合いが丁寧なんです。これだけずっと一緒にいて、「もうそろそろ敬語も止めていいんだよ?」と何度言っても止めない。もちろん、仲はいいし家族みたいな関係性だけど、いい意味で距離感が変わらない。だからこそ、なあなあにならず、常に“初めて恋をするよう”な気持ちになりますよね。
MASATO お、すごい。ちゃんと曲名にかけてる(笑)。
REI あははは。でも、確かにUさんの言う通りだなと思いますね。メンバーでもパートナーでもそうだと思うんですけど、なあなあの関係でいるのではなく、常に相手に対してのリスペクトの気持ちを持ち続けることが大事なのかなと。そのためには自分を高める努力を怠らないことも大切なんですよね。もちろん自分だけ、相手だけががんばってもダメです。両方が自分自身を高める努力をすることで、結果的にリスペクトの気持ちをお互いに持ち続けられるのではないかなと。
U そういえばREIくんもMASATOも、気付けば知らないソフトが使いこなせるようになっていたり、ギターがうまくなっていたり、「これをやっておこう」と決めてなかったことでも自主的に努力して、お互いを驚かせることが多い。それって、お互いを高め合うための努力なのかもしれないね。
MASATO 実際、2人のことは本当にすごいなと心から思っています。常に驚かされるので、こちらもびっくりさせたいと思うし。だからこそ、結果的に尊敬し合えているのかなと。「ついていかなきゃ」というか、2人にできないことで自分もグループに貢献しなければという気持ちがありますね。そう思いながら努力し続けてきた結果、今は3人それぞれの役割分担がちゃんとできている気がします。任せるところはお互いに任せ合うという信頼関係も、自然と築くことができました。いい距離感を保つには信頼関係が必要だし、信頼関係を構築するには適度な距離感が必要なんです。
──今のお話をうかがっていると、「僕はもう決めたんだ どんな君もどんな毎日も そばにいる それだけで」という歌詞はTHE BEAT GARDENの関係性のことを歌っているようにも聞こえますね。
U ああ、なるほど確かに。そういえば僕ら、昔はよく「もし音楽がうまくいかなくても一緒にホットドッグ屋をやろうぜ」という話をしていたんです。大阪から上京してきた段階で、3人で一緒じゃないと意味がない。もちろんSATORU(2021年8月に脱退)がいたときは、「4人でなければ」と本気で思っていました。そういう気持ちの軸はずっと変わってないし、このメンバーでいることの安心感と責任感はありますよね。
からの記事と詳細 ( THE BEAT GARDEN「Bell」で描く、さまざまな恋模様とファンとの絆 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー - 音楽ナタリー )
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