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半導体メモリー大手の米Western Digital(ウエスタンデジタル、WD)は2022年8月10日、半導体の技術動向や日本の半導体政策を説明するシンポジウムを都内で開催した。オンラインで登壇した同社プレジデントのSiva Sivaram(シバ・シバラム)氏は、「NANDフラッシュメモリー市場は2025年に1000億米ドル(約13兆円)まで拡大する」とし、協業関係にあるキオクシア(旧東芝メモリ)との設備投資を継続していく考えを示した(図1)。
シバラム氏は、メタバースの浸透やゲーム市場の拡大、車の電動化などを受けて、今後も生成されるデータ量が拡大し続けると指摘した。データを処理・保存するサーバー向けなどに3次元NAND型フラッシュメモリーの需要が長期的に高まるとし、「メモリービジネスは好調で、WDは技術開発で強力なロードマップを持っている」と語った。WDは日本で過去15年間に累計400億米ドル(約5兆2000億円)を投資してきたとし、今後もキオクシアとの連携を継続していくとした。
ウエスタンデジタルジャパンのプレジデントである小池淳義氏は、メモリーをコンピューターの中心において性能を高める設計思想「メモリーコア」を紹介した。さらに小池氏は、膨大なデータを処理する時代を想定した技術も提案。スマートフォンやカメラ、工場や車などから収集した雑多なデータを整理して、効率よく収納していく「ゾーンストレージ」と呼ばれる技術を適用すれば、記憶容量の増加やシステム簡略化によるコスト削減、データ書き換え回数の抑制による耐久性向上などが実現できるとした(図2)。
小池氏は、将来的に応用や役割が増えることで「メモリーは戦略的なプロダクトになる。汎用品だと考えていたら大変なことになる」と指摘する。
メモリーをコンピューターの中心に据える
シンポジウムには衆議院議員で自民党の半導体戦略推進議員連盟会長を務める甘利明氏が登壇し、世界情勢の中で半導体業界が置かれている現状や技術進化の見通しを説明した(図3)。同氏は「これまでコンピューターはCPUが中心だったが、これからはメモリーの機能も重要になる」と指摘。「AI(人工知能)や量子(計算機)などこれまでの延長線上にない技術を組み合わせていくため、時代の変化を先取りして何をすべきかを政治家ももっと考えないといけない」と語った。
続いて講演した経済産業省商務情報政策局総務課長の西川和見氏も、メモリーを中心にしたコンピューター構想(メモリー・セントリック・コンピューティング)など、将来の半導体・コンピューター技術を紹介した(図4)。基本的にCPUが全ての演算を実行する現在のコンピューターアーキテクチャーを見直し、メモリーを中心に配置することでデータ処理の高速化や低消費電力化を狙う構想だ。
メモリー・セントリック・コンピューティングでは、メモリーが周辺の複数のプロセッサーに処理を割り当てる(図5)。CPUを介さないので処理が速く、データ転送が少ないといった利点があるという。
からの記事と詳細 ( 経産省がメモリー中心のコンピューター技術に期待、WDイベントで - ITpro )
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