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Sunday, May 29, 2022

ウエアラブルデバイス普及加速で大注目、「プリンテッドエレクトロニクス」研究開発の世界|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 - ニュースイッチ Newswitch

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いま、「プリンテッドエレクトロニクス」が注目されている。ウエアラブルデバイスの普及が加速する中、需要が高まるフレキシブル基板を用いた電子回路を、容易に形成できる技術だからである。具体的には、金属や半導体を溶媒に分散させてインクとし、印刷技術を用いて電子配線や素子を作製する。従来のフォトリソグラフィー技術よりも低い温度で作製でき、複雑な工程が不要になる上、材料の無駄がないオンデマンドな製法であるため、環境にやさしく大規模化も容易といった利点がある。

我々のグループでは、(1)金属インク材料の開発から始まり、(2)インクを微細にパターニングする印刷技術、(3)メッキや接合といった周辺技術、および(4)印刷で作製したトランジスタ素子といったアプリケーション(応用ソフト)までを一貫して開発している。

既存の印刷技術では、10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の配線が限界であり、素子応用には解像度が十分でないという欠点があった。そこで我々は、波長の短い紫外光を照射した部分のみが分極する基板を用い、ここに金属インクを選択的に吸着させることで、1マイクロメートル以下という微細な配線を可能とする独自の印刷技術を開発した。

また、これまでのプリンテッドエレクトロニクスで用いられてきた銀ナノ粒子インクに代わり、低コストかつ断線やショートなどを起こしにくい銅インクを見いだした。さらに、印刷した配線をフレキシブル基板へと密着させる技術や、配線へさまざまな部品を接合する技術といった、エレクトロニクス製品の製造に必要不可欠な技術の開発を行っている。

一方で、プリンテッドエレクトロニクスを広く社会に実装するためには、用途に応じて材料やプロセスを柔軟に選択することが重要である。しかし、インクという液体を塗布する製造技術は、これまでのエレクトロニクスの製造技術とは全く異なっているため、何も知見のない状態ですぐに用いるのは難しい。

我々は、NIMSで開発したプリンテッドエレクトロニクス技術をさらに世の中に広めるため、2018年にプリウェイズ(茨城県つくば市)をNIMS認定ベンチャーとして設立した。プリウェイズでは、前述した微細印刷技術を卓上の装置に落とし込んだ「金属ナノ粒子配列システム」の販売に加えて、カスタマーの要望に沿ったさまざまな印刷装置や材料の開発を行っている。また、配線基板の試作を行っているほか、我々が持つ薄膜形成技術、メッキ技術、接合技術といったさまざまな技術を用いて、カスタマーが抱えるさまざまな問題の解決に取り組んでいる。

物質・材料研究機構(NIMS) 機能性材料研究拠点 プリンテッドエレクトロニクスグループ グループリーダー 三成剛生

松江市生まれ。大学卒業後、企業勤務を経て2006年博士(理学)取得。同年より理研勤務、09年よりNIMSに着任し20年4月より現職。18年に株式会社プリウェイズを設立。

日刊工業新聞2022年4月27日

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