[東京 29日 ロイター] - 日銀の3月17―18日の金融政策決定会合では、最近の経済・物価情勢を巡る環境変化を踏まえ、さまざまな可能性を想定しつつ、金融政策上の対応を考えておくことが重要だとの意見が出ていたことが明らかになった。日銀が29日、決定会合で出された「主な意見」を公表した。
決定会合では、賛成多数で金融緩和の現状維持を決めた。会合後の声明文では、原油価格高騰で消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は当面、プラス幅を「はっきりと拡大する」とした。
委員からは、物価上昇圧力の中でも金融緩和を継続すべきとの意見が目立った。ある委員は「(日本の)インフレ率が目標の2%を継続的に上回っていくような状況にはない」と指摘。「金融緩和の継続によって、感染症からの(経済)回復を支えていくことが重要だ」と述べた。
「企業収益から賃上げ、設備投資増加への好循環の動きと負のショックが混在している」として、物価の基調が安定的・持続的に目標に到達するまで緩和を続け、好循環の動きの後押しをするのが妥当だとの意見もあった。
一方、ある委員は「資源価格等の上昇により、インフレ率が2%を超える可能性もあるが、今後、経済・物価への下押し圧力が強まれば、デフレ再燃の危険性すらある」と指摘。「物価安定目標の達成が危ぶまれる場合は、躊躇(ちゅうちょ)なく機動的に対応すべきだ」と踏み込んだ。
金融政策運営に当たり「資源価格や為替相場の変動そのものではなく、あくまでもそれらが経済・物価に及ぼす影響を考える必要がある」との意見もあった。
<物価、22年度後半以降は「下振れリスク」との指摘も>
消費者物価の前年比について、ある委員は2022年度前半は資源価格の高騰などによって2%近傍で推移するとみられるものの「22年度後半以降は、資源価格が反落した場合における下振れリスクにも注意が必要だ」との指摘が出された。
需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「23年度末に物価安定目標を達成するのは難しい」との意見も見られた。
原材料高に伴う企業の値上げについては「企業がコスト転嫁する品目が広がっているように見受けられる」との意見が出る一方で、「企業物価の上昇に比べれば、小売価格への転嫁は現時点で限定的だ」との指摘もあった。
ある委員は、最近の資源高で日本の交易利得は「2008年ごろと同様、悪化する可能性がある」とする一方、コロナ禍の消費手控えで積み上がった「強制貯蓄」が家計の実質所得減少のバッファーとして作用することも期待されるため、「内需の耐性は08年当時よりも高い」と述べた。
<市場調整時の年金への影響に懸念>
決定会合後の声明は、ロシアのウクライナ侵攻による経済・物価への影響は「極めて不確実性が高い」とした。
ある委員は対ロシア制裁の影響について「モノやお金の流れが滞ることによる影響は時間をかけて発現する」と指摘。「今後、さらに制限や負荷が増える可能性がある点には注意が必要だ」と話した。
一方、低金利環境下で年金基金などが債券から株式などの高リスク資産に投資先を移してきたことに触れ、「ウクライナ情勢や欧米の金利上昇の影響によりリスク資産価格の大幅な調整が起こる場合には、そうした先にも大きな影響が及ぶ恐れがある」と指摘した委員も見られた。
(和田崇彦)
からの記事と詳細 ( 様々な可能性想定して政策対応考えておくべき=日銀会合主な意見 - ロイター (Reuters Japan) )
https://ift.tt/jdCRqer
No comments:
Post a Comment