病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(Jikaboom/gettyimages)
<本日の患者>
T.K.さん、40歳男性、イベント会社営業部次長。
「今日、T.K.さんが先生の外来予約してますね」
「そうなんだよ」
「また挑戦してくれると良いですね、禁煙」
「そうだといいね。また笑顔で接してね」
「もちろんですよ!」
今朝、クリニックの診療開始前のミーティングの後で、外来の主任看護師Cさんとこんな立ち話をした。
T.K.さんは1年前に、私たちの家庭医クリニックを受診して、禁煙について相談し、ニコチンパッチを使用して禁煙に成功していた。しかし、3カ月前からまた喫煙する習慣に戻ってしまったという。そのことで今日は相談があると予約をとってくれたのだ。
タバコの健康への悪影響
喫煙が習慣になるのは、タバコに含まれるニコチンによって体内で放出されるドパミンが脳に快感を起こさせるからだ。そのため、知らず知らずに身体的にも心理的にもニコチンを欲してしまう。
「とりあえず」「何はなくとも」、といった感じで、タバコを吸うという行動が(ある意味儀式的に)習慣として染み付いてしまう。ニコチン依存症と言われる所以である。
ただ、その習慣となった喫煙によって引き起こされる健康への悪影響は深刻だ。喫煙に起因する死亡は、がん(34%)、心血管系疾患(32%)、または呼吸器疾患(21%)が主要なものである。
喫煙に関連するがんは、肺、口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、子宮頸部、大腸、直腸、そして急性骨髄性白血病と広範囲におよぶ。肺がんの90%が喫煙に起因し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)での死亡の80%は喫煙に関連するという報告もある。
最新のデータが整備されていない
この機会に、家庭医として日頃不自由に感じていることについても語っておきたい。それは、日本では、健康に関連することに限っても、アップデートされた統計が整備されていないということである。
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