
7月に結党100年を迎える中国共産党。その成立初期の歴史は、まだ解明されていないさまざまな“謎”がある。京都大学の石川禎浩教授が解説する。
記念日は「7月1日」、でも実際は…
中国共産党は今年7月に結党100周年を迎える。国内の新型コロナウィルスを制圧し、未曾有の危機を乗り切ったという勲章をひっさげて、大きな祝賀行事が行われるであろう。100周年の公式行事は、創立記念日の7月1日に行われるはずだが、実はその日はあくまでも「記念日」であって、100年前のその日に何かがあったわけではない。結党から17年たった1938年、党に創立を祝う機運が生まれて記念行事を計画したものの、第1回党大会の記録もなく、毛沢東を含め、誰もその開催日を思い出せなかったため、7月ごろだったのはほぼ確かだということで、とりあえず1日を記念日にしたのである。 第1回大会の開催日が判明したのは、共産党が政権を取ったあとの1950年代末のことである。大会当時のロシア語の報告資料が見つかり、そこには上海フランス租界の党員の居宅で、7月23日に会が開かれたと記されていた。ただし、共産党はすでに20年以上も「七一」に祝賀行事をし、さらには成り行きで第1回大会自体も7月1日に開かれたと説明していたから、この期に及んで変更するのも不体裁であった。結局、記念日は「七一」のままとされ、今日に至っている。一方、歴史上の第1回大会の開催日が23日だということは、記念日と切り離して、党史の定説として受け入れられている。 ちなみに、上海の第1回大会の会場となったその場所を、かの芥川龍之介がたまたま大会の3カ月ほど前に訪れ、訪問記(「上海游記」)を残している。上海の新進の文化人(李漢俊)に会見するのが目的だったが、李は共産党員で、大会は彼の家で開催されたのだった。大会が行われたその部屋は復元され、現在「中共一大会址記念館」として公開されているが、芥川の描写した室内の様子は、まさに復元された部屋そのものである。 というわけで、党の第1回大会がいつ、どこで行われたのかというだけだったら、上記のようにすでに答えは出ているのだが、共産党がいつ、どこで成立したかに答えるのは、それほど簡単ではない。何を言いたいのか。党の成立と第1回大会は、単純にイコールで結べないという考え方もできるのである。第1回大会の開催をもって党の創立とするのは、共産党自身の考えである。だが、ちょっと考えれば分かるように、この日この場所で急に組織としての共産党が立ち現れたわけではない。つまり、実体としての党の組織はこれより先にできていて、その組織の各地の代表が上海にやって来て大会を開いたと考えれば、党は大会より先に成立していたことになろう。
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