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Wednesday, April 22, 2020

さまざまな恋愛のかたちをオペラで辿りながら、女の一生を描いてしまおうという本 - ニコニコニュース

『恋するオペラ』(集英社) 著者:金窪 周作


オペラの基本は「恋愛」

私にとって今年はモーツアルト強化年間である(ALLREVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2002年)。正月から毎日モーツアルトばかり聴いている。ピアノ曲や弦楽四重奏、交響曲と聴いてきて、困ったのがオペラだ。昔からオペラミュージカルは苦手だった。ところが、「ドン・ジョバンニ」と「フィガロの結婚」を聴き始めたら……いいではないか。日々のモーツアルト漬けの成果か、とても心地よい。これを機会に、いっちょオペラに目覚めてみるか。

というわけで金窪周作の『恋するオペラ』を読んでみた。この本、オペラを知らなくても面白い。「オペラには私たちの日常にはないすべてがあります」「オペラが面白いのはメロドラマであるからです」という著者によると、オペラの基本は恋愛ドラマ。さまざまな恋愛のかたちをオペラで辿りながら、女の一生を描いてしまおうという本である。モーツアルトの「コシ・ファン・トゥッテ」やロッシーニの「セビリアの理髪師」で若い娘の恋心を語り、ヴェルディの「椿姫」で大人の恋を、シュトラウスの「ばらの騎士」で青年と熟女の恋を語る。章とびらには池田理代子によるイラストを飾るこりようである。

作品の内容だけでなく、成立背景や時代的位置づけもさらりと語ったうえで、著者自身による歌詞の意訳を載せるなど、構成もじつにうまい。私のように昨日までオペラが苦手だった者にもよく伝わる。「フィガロの結婚」がきわめて政治的な作品であることなどを読むと、フィッシャー=ディスカウの歌も違って聞こえてくる。

同じくオペラを解説した新書でも、砂川稔監修の『オペラの魔力』(青春出版社プレイブックス)はまったく性格が違う本だ。名作ガイドや人気歌手のガイドにページを割いている。読む楽しみでは『恋するオペラ』のほうが勝っているが、CDを買ったり舞台を見に行こうというにはこちらが役に立つ。というわけで、今回の文章、BGMカール・ベーム指揮「フィガロの結婚」でした。

【書き手】
永江 朗
フリーライター。1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。

【初出メディア
週刊朝日 2002年5月3日-10日

【書誌情報】

さまざまな恋愛のかたちをオペラで辿りながら、女の一生を描いてしまおうという本

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