日立製作所で30年近く半導体の研究開発に携わった東京理科大学の河原尊之教授。現在は2050年ごろの実用化が見込まれるゲート方式量子コンピューターをしのぐ計算能力を、シリコン半導体を使って30年ごろまでに達成する目標に挑む。
半導体は集積化により性能をどんどん高められる。これまでに回路線幅22ナノメートル(ナノは10億分の1)の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を使い、4096ビットの拡張可能な全結合型イジング大規模集積回路(LSI)システムを試作した。
大手企業は大型設備が必要な量子計算クラウドサービスを展開するが、河原教授が目指すのは、量子コンピューターを超える性能を持つ「手のひらサイズの計算機」だ。
量子コンピューターと同様に創薬や素材の開発などに役立つ「組み合わせ最適化問題」を解く計算機になる。高性能コンピューターの開発は世界中で競争が激しいが「日本の半導体復活にも貢献できる」(河原教授)として一層力を注ぐ。
未来の量子計算機の計算能力レベルを既存のコンピューターで打破することを目指して始めた研究も、最近は量子計算機にスピントロニクスを応用するなど領域を広げている。9月には学生が米電気電子学会(IEEE)のコンテストで入賞した。モノづくりの経験として学生にLSIの開発を任せ、国際学会へと送り出す。
「教育が最も投資効率が良い」と語り、多品種少量生産が可能な半導体の「ミニマルファブ」を大学の授業に組み込んで人材を育成することなどを提案している。(随時掲載)
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