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Tuesday, January 17, 2023

自動車業界の悩ましい問題:コンピューターの塊はビジネスになるか? - アゴラ

mungkinbelum.blogspot.com

自動車の話題になるとコメント欄がいつもの2倍に膨れ上がります。皆さんの熱い思いが書き綴られていていてこれぞ参加型ブログの真髄という気もします。

先日、自分の自動車のブレーキの具合を見てもらいに点検に出した際、店主と延々と駄話をしました。その時、ボソッと一言。「内燃機関の自動車ならブレーキシューが減ることもあるけれど電気自動車だと回生ブレーキがあるからブレーキシューが減ることはまずないだろうね。ブレーキの修理なんて今後、なくなっちゃうんだよ」と。

Model 3 テスラ社HPより

EVの特徴に回生ブレーキというのがあり、下り坂やアクセルを外した時にこの回生ブレーキが利き、しかもエネルギーが蓄積されます。ある実験で富士スバルラインの5合目頂上からテスラとリーフの回生エネルギーがどれぐらい貯まるかというのがありました。富士スバルラインは5合目から下まで約30キロの標高差約1500mの下りのみでこう配も比較的安定した道のりです。実験結果はリーフが53%から68%になったのに対し、テスラは34%から40%になっています。但し、実験に使ったリーフのバッテリー容量が30kWhに対してテスラは100kWhだそうですので計算上、リーフは30kWh X 15% = 4.5kWh、テスラは100kWh x 6% = 6kWhエネルギーを獲得したことになります。(実際は諸条件があるのでこの計算通りにはなりません。)

さて、自動車修理会社の社長の彼は「自動車修理のビジネスはもう廃れる一方だよ」と数年も前から危惧しています。今時、メカニックになりたいという若者も少なく人手不足も祟っていると嘆いています。

そんな彼が面白いことを言っていました。テスラが事故った場合、テスラの認定工場で修理をしないとダメだというのです。最近の一部のクルマはこのような要件がついています。私の乗るGTRもそれが条件でそれを破るとワランティが無くなると言われたのですが、もう古いので友人の修理工場で見てもらっています。

しかし、テスラの場合、認定工場で修理しないとテスラ社が同車両をシステム上、リセットしないというのです。つまり繋がるクルマは監視されているということです。程度の問題もあると思いますが、別のところで直したらテスラがテスラではなくなるという話です。いつか、独禁法に引っかかるような気もします。かつてのマイクロソフトのインターネットブラウザーの抱き合わせ販売問題と同じですよね。

これがどこまで事実なのか、テスラ社のポリシーの話なので詳しい方に伺ってみたいと思います。

しかし、です。近い将来、EVに自動運転機能が付いたコンピューターの塊のような物体が道路を走ることを想像してみてください。皆さんのご家庭の家電製品や電気製品、テレビや録画機、パソコンが壊れたら修理に出しますか?修理代が高すぎて取り換えた方が安いというケースが多々あると思います。

クルマもコンピューターだらけの精密製品です。内燃機関の自動車の修理はパーツごとに車の仕組みを理解し、それを直す技能を持つ自動車修理工が活躍したのです。ですが、コンピューターの塊はブラックボックスの電子機器で街の自動車修理工場では対応できません。とすれば将来クルマはぶつけたら廃車になるのでしょうか?

以前、自動運転の車が出来たら自動車保険業界はなくなるのではないかと騒がれましたが、もしかすると真逆で全損となる確率が上がり、保険レートが上昇するという皮肉が起きることがあるかもしれません。

くだんの自動車修理工場社長が下り坂のビジネスだと嘆いているのですが、特殊技能の持ち主ということで実際には今後、何十年に渡り仕事がどんどん増えていく可能性があるとみています。つまり、自動車修理会社が人材不足で淘汰される中、一定の修理の需要を賄うにはオーナー兼メカニックの技能を持った修理工場への需要は圧倒的に高まり、一般論の真逆が起きるのです。

私は衰退産業の代表的格の一つである書籍の卸、小売り販売をカナダでやっていますが、なぜ、年々成長できているかと言えば今からこの分野に新規参入する業者がいないからです。つまりブルーオーシャンは新しい事業だけではなく、衰退産業と思われた業種をうまく取り込むこともまた別の意味の勝者なのです。

自動車については過渡期にあると思います。EVが普及するかどうかはクルマ単体の問題だけではなく社会のインフラなどがどこまでついて行くか、これが肝だと思います。個人的にはEVは否定しません。内燃燃料の最大のネックはガソリンスタンドが減っているという事実です。EVは近距離対応だと言われていますが、そのうち、あの村にあったガソリンスタンドがなくなったらしい、となれば一体どこで給油したらよいかわからないということも起こり得ます。

この過渡期は我々消費者の綱引きが産業の行方を決めていくのだと思います。自動車産業の話をするのにEVや内燃機関の良し悪しの話だけをしても意味がありません。若者がその業種に興味を持たない限りその業界を支える人がいないでしょう。部品の供給がなければ修理も出来ません。チャージングステーションにしろ、ガススタンドにしろ十分なサービスインフラがあるでしょうか?非常にグローバルな議論だと思うのです。

私は昨年約3000万円を投じて10年先でも対応できるEV施設群を導入しました。それでも車の行方について結論はいまだ分からないと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月17日の記事より転載させていただきました。

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