NTT物性科学基礎研究所の斉藤志郎上席特別研究員と産業技術総合研究所の松崎雄一郎主任研究員らは、超電導量子ビットの寿命を左右する欠陥の識別に成功した。欠陥ごとに超電導回路の製造プロセスを改良できるようになる。量子ビットを長く維持できると量子センサーや量子コンピューターの性能が飛躍する。
超電導回路を構成するジョセフソン接合の欠陥の種類を識別する技術を開発した。ジョセフソン接合のアモルファス絶縁膜中では水素不純物やトラップ電荷などが2準位欠陥を作る。これが超電導量子ビットと共鳴してエネルギーが奪われ量子ビットが壊れる。
今回、2準位欠陥の臨界電流型と電荷型の二つを識別した。遷移周波数と磁束を変えて量子ビットの励起確率を画像化すると、それぞれに特有のスペクトルを観測できた。実験で検出・識別できたのは世界初。臨界電流型は絶縁膜中、電荷型は絶縁膜中や接合界面に欠陥が存在すると考えられる。欠陥の種類ごとに製造プロセスを改良できる。
量子コンピューター開発では量子ビットの寿命が演算時のエラー率を決める。寿命はこの20年間で10万倍以上に延びたが、まだ足りず、量子ビットの数を並べて補うことが模索されている。寿命が延びると、演算に必要な量子ビット数を減らせ、計算能力を大幅に引き上げられる。今後、欠陥のない長寿命な量子ビットを目指す。
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