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Monday, September 12, 2022

なぜマウスは地方を重視するのか 成長を続ける国産PCメーカーの「次の一手」 - ITmedia ビジネスオンライン

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 かつて日本を代表したPCメーカーが次々と外資系企業にPC事業を切り売りするなか、国産・高品質を掲げて地道に成長を続けてきたのがマウスコンピューターだ。今ではタレントを起用したテレビCMで「マウス」の名を聞いたことがある人も少なくないだろう。成長を遂げるマウスコンピューターだが、華やかなマスプロモーションと同時に、地方開催のイベントにも積極的に出展している。狙いは何か。同社でパートナービジネスを統括する金子氏と、イベントを取り仕切る宮本氏に話を聞いた。

法人ビジネスの成長に地域のパートナー開拓は必須

―― タレントを起用したテレビCMやWeb動画で国内PCメーカーとしての存在感を急速に増しているマウスコンピューターですが、その一方で、地方イベントにも精力的に参加しているのが印象的です。狙いを教えてください。

マウスコンピューター マーケティング本部マーケティング部の宮本壮人氏

宮本氏 地方イベントへの出展を増やしているのは、やはりコロナ禍の影響があります。営業面で直接お客さまに会う機会が減ったこと、特にその傾向が地方で顕著だったことを課題として認識していました。その対策としてオンラインイベントへの参加も試行しましたが、対面でないと温度感が伝わりづらいという営業部の悩みもあり、成果につなげるのはなかなか難しいと感じています。

 一方、22年に入ってオンラインからフィジカルイベントに回帰する動きが出てきたことから、その流れに乗って地方を中心にこうした課題を解消しようと考えました。北海道などこれまでになかった地域も対象になり、現在は出展比率の半数が地方イベントです。従来は3割程度だったので大幅な増加ですね。

マウスコンピューター 第一営業本部 本部長の金子覚氏

金子氏 タレントを起用した動画広告に触れていただきましたが、こうした飛び道具的なマーケティングは、費用対効果を考えるとやはり首都圏や大都市に集中してしまいます。こうした取り組みによってある程度はマウスの名前を知っていただけていると思いますが、日本全国に行き渡っているかと問われればまだまだです。

 また、販路の問題もあります。もともと当社はWeb直販のイメージが強い上、量販店ビジネスにおいても都市部の店舗が中心で、どこでも実機に触れられる機会を提供できているわけではありません。コロナの影響で購買経路のオンライン化が進んでいるとはいえ、これはあくまでコンシューマーの話。法人ビジネスにおいては地域に根ざしたパートナー販売店の影響力が強く、「地方企業の経営課題に寄り添って活動できる法人営業部隊がマウスコンピューターにもいる」ということを知っていただくことがスタートラインです。

 法人ビジネスを事業の大きな柱に育てていく中で、5年ほど前から地方のパートナー販売店の開拓に注力し、パートナープログラムがスタートした当時は10社程度だったのが現在は30社超と、当社の製品を拡販していただける企業も増えてきました。ビジネスのさらなる成長を目指す上で地方開拓は必須であり、地方との関係性を構築するイベントへの参加を重要な戦略の1つとして位置付けています。

―― 地方イベントへの出展を推進する中でどのような変化がありましたか。

金子氏 まず社内的な変化で申し上げますと、これまでイベントをとりまとめていた部隊が営業部からマーケティング部に変わり、イベントで収集したリードを効率的に営業アクションへトスするフローが構築されたこと。これによって、多くのイベントに参加するリソースを確保できるようになりました。

 一方、社外的な変化では、イベント会社が主催する大型イベントだけでなく、地域の販売店が主催する地方フェアや業種特化型のイベントに多く出展するようになったことです。後者は集客規模では劣りますが、その業界に携わる人の割合が増えるため、われわれ自身が業界特有の課題を知るきっかけにもなりますし、質の高いリードを獲得する機会にもなります。

―― 業種にフォーカスしたイベントへ参加するようになった理由を教えてください。

金子氏 1つは、当社の知名度が上がったことで、パートナー販売店が主催するイベントに主力メーカーの1社として呼んでいただけるようになったことです。例えば以前、老舗の文房具屋さんが集まるイベントに出展したことがあるのですが、回りはペンやメモ帳が並ぶ中で、当社はタブレットを使ったプログラミング学習の展示を行いました。主催者が得意とする領域でフェアを開催する際、何か新しいテーマの見せ方をしたいといった場合に「マウス」の名前が挙がるようになったことは大きいです。このときもGIGAスクール構想でITCを活用した学習の認知は広がっていたので、実際にどんなものだろうと気になっていた来場者で実機展示の前には長蛇の列ができました。

 もう1つはわれわれの法人事業戦略と強く結び付いています。新型コロナの影響が出始めた当初は、テレワークといった働き方の変化でノートPCの需要が跳ね上がりましたが、これが一巡して、現在はより高性能なPCや外付けディスプレイと組み合わせた生産性の高い環境を求めるニーズに移りつつあります。例えば、22年度4月〜6月のPC売上構成比を見ると、DAIVやG-Tuneといった外付けGPUを搭載する製品が前年と比較して30%も伸張しています。多くの業界でDXが加速していることも含めて、高性能なシステムのニーズが高まっていることを受け、特に当社は民需領域では建築や放送、デジタルサイネージをターゲットに、その他e-sportsやクリエイティブな学科を有する大学、専門学校のキャンパスPCや設備端末など教育領域での地方開拓も力を入れています。

22年7月に開催された「関西放送機器展」のマウスコンピューターブース

宮本氏 例えば、建築業界はまだまだデジタル化が進んでいない領域で、依頼主との内観デザインの確認にミニチュアを用いることも少なくないのですが、これをフルCGで提供すればコストを抑えられますし、レイトレーシング技術によって部屋に差し込む光の状況を時間帯ごとに確かめられれば顧客満足度も高まります。こうしたアプリケーションを開発している企業と組んで建築系のイベントに出展し、地方の工務店の方々に「自分たちがお客さまにどんなことが提供できるのか」を分かりやすく見せていくことによって新たな需要を掘り起こしています。DXと聞くと自分たちにはあまり関係がないと思われがちですが、来場者の方々の身近な言葉で、より具体的なイメージで直接的に訴えられるイベントは非常に効果が高いと感じています。

 その一方で、われわれはあくまでメーカーなので、地方の企業が抱えている課題や業界特有のニーズを完全に把握しているわけではありません。だからこそ、エンドユーザーと直接相対している地域に根ざしたディストリビューターや販売店さまとのパートナーシップが必要不可欠なのです。

イベントをきっかけに商談が進むことも多い。地方との関係作りにイベントは欠かせないと宮本氏は話す

マウスコンピューターが選ばれる理由

―― 法人ビジネスの成長戦略と地方開拓を進める手段としてのイベントの位置付けは分かりました。ただその一方で、パートナーにとってはエンドユーザーの課題解決が主目的であり、さまざまなメーカーの製品を取り扱っている以上、「マウスでなくても構わない」ということにもなります。マウスコンピューターの強み、選ばれる理由は何でしょうか。

金子氏 直接的な理由としては、最近では納品までの期間が短いことですね。世界情勢や新型コロナを起因とするサプライチェーンの混乱を背景に、部材調達の難しさが顕在化していますが、これは大量に仕入れてコストダウンを図るようなスケールメリットを生かす規模のビジネスにとって顕著です。一方、当社はもともとシェアを取りに行くビジネスというよりも、信頼できるベンダーと密にやりとりをして、ニーズにピンポイントに当てにいく、いわば「点のビジネス」をしていたので、影響はそれほど大きくはありません。その結果として、「(ニーズはあるのに)売る物がない」「納期が長すぎる」といったパートナーの声にきちんと応えられているというのが1つ。

 もう1つはパートナー販売店のビジネスの変化もあります。例えば、これまで官公庁向けのビジネスしかしてこなかった企業が民需もターゲットにする、または業界特化型の販売店が別の業界に拡大するとなった場合、従来取り扱っていた製品ではなかなかマッチしないというケースで、幅広いニーズに柔軟に対応できる当社が選ばれることも少なくありません。また、ただ「売る」ことは可能であっても、サポート面や品質で“手離れ”の悪いメーカーは、販売店の収益性に影響してしまいますので、その点でマウスを強く推してくださるパートナーもいらっしゃいます。

九州都市開発・建設総合展2022に初出展

―― それでは最後に、直近で出展予定のイベントの紹介と展示の見どころなどを教えてください。

宮本氏 9月28日、29日の2日間に渡って開催される「九州都市開発・建設総合展2022」に出展します。マリンメッセ福岡で行われる建設業界向けの総合展で、当社としては初出展です。建設資材や測量機材から、ドローンを使った次世代技術、廃棄物処理やリサイクルなど、業界を広くカバーする内容になっており、当社はその中でCADやシミュレーションを扱う「サービスソフトウェアゾーン」に展示ブースを設ける予定です。

 具体的な展示内容については、「i-construction」(国土交通省が推進する建設現場のICT活用)をキーワードに、主にモバイルPCでのCAD活用を想定したテーマを検討しています。ここではクリエイター向けブランド「DAIV」シリーズの14型モデルで重量1キロを切る「DAIV 4P」や、インテル® Core i9-12900H プロセッサーとGeForce RTX 3070 Tiを搭載する高性能な16型モデル「DAIV 6H」をはじめ、さまざまな製品を並べます。

 また、建設業界では設計の効率化手段としてBIM(Building Information Modeling)などが注目されていますが、より高い性能が求められるBIM/CIM/3D CAD向けの製品として、インテル® Core i7-12700プロセッサーとNVIDIA RTX A4500を搭載するデスクトップPC「DAIV Z9-A45」と、24.1型ディスプレイ「iiyama ProLite XUB2495WSU」を組み合わせた次世代の設計環境も展示します。楽しみにしていてください。

金子氏 幅広い業界でデジタル活用が進む中、さまざまな経営課題に対してわれわれの製品をどのように活用し、何が実現できるのか。イベントを通じてそのヒントを持って帰っていただければと思います。われわれ単独では解決が難しい問題も、地域のパートナーと一丸となってサポートしますので、困りごとや悩みごとがあれば来場して率直にぶつけていただければ幸いです。

インテル® Core i7-1260P プロセッサー搭載、重量1キロを切るクリエイター向け14型モバイルPC「DAIV 4P」(写真=左)と、インテル® Coreと i9-12900H プロセッサーとGeForce RTX 3070 Tiを搭載する高性能16型ノートPC「DAIV 6H」(写真=右)

「九州都市開発・建設総合展2022」にマウスコンピューターが出展


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