政府・企業・家計の三態から国家レベルで経済の動向を把握するマクロ経済。企業の賃金や私たちの消費行動も、最終的には国の政策を左右する要素となる。今回はマクロ経済をテーマにした過去記事の中から、いま注目すべきものをいくつかピックアップしていく。
政府・企業・家計の全体で経済を把握する「マクロ経済」
「マクロ経済」とは経済の三態(政府・企業・家計)を総体として把握し、一国の経済全体を数値化したものだ。これに対し、企業や家計ごとの単位で調査・分析するものをミクロ経済と呼ぶ。
マクロ経済にはGDP(国内総生産)成長率をはじめ、鉱工業生産指数、消費者物価指数などの物価指数といった、さまざまな指標が用いられる。円の為替レートやインフレ率、賃金率、失業率といった数字もすべてマクロ経済の構成要素にすぎず、こうした指標を大きな視点から捉えて世の中の動きを見ることがマクロ経済の特徴だ。
マクロ経済の動きを示す統計は「マクロ統計」と呼ばれ、その国の景気動向(改善や悪化)を示している。また国の政策決定や機関投資家の判断においても重要な判断材料とされることが多い。
この記事ではマクロ経済に関連する過去記事のうち、ここ数年のものをピックアップして紹介する。
エモット氏「日本復活は、低賃金戦略の大転換からだ」
低迷する日本経済について、その理由をマクロ経済の観点から説明しているのはジャーナリストのビル・エモット氏。同氏によると「経済全体での生産性の成長なしに単位労働コストを抑えるには、従業員の賃金を大幅に抑えなければならない」が、これは1つの会社や部門単位で理にかなうこと。逆にマクロ経済という観点では「長期的に経済成長が遅れる」原因になるという。
日本企業は中国や韓国などのライバルと競う中で、これまで人件費を厳しく調整することで価格競争と利益を維持してきた。それが日本経済全体に悪影響を与えているというわけだ。
簡単ではない「2050年脱炭素」縦割り行政を克服せよ!
2020年12月に菅内閣(当時)が決定した、約20兆円の追加経済対策。メディアからは「財政規律を壊す」「将来へのつけ回しが増える」といった批判が上がったが、竹中平蔵氏はこれらを「マクロ経済運営の基本を無視した誤った批判」と一蹴する。特に約2兆円のグリーンイノベーション基金については、「2050年脱炭素」に向けた歴史的な政策転換の第一歩になるという。
日銀が始める「気候変動対応オペ」に噴出した賛否両論
2021年に日銀が発表した「気候変動対応オペ」。文書の中では「中央銀行の立場から民間における気候変動への対応を支援していくことは、長い目で見たマクロ経済の安定に資するものと考えている」という宣言とともに、具体的な取り組みとして「金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする」新たな資金供給の仕組みについて言及した。
一方で、こうした動きを「市場中立性への配慮」を欠いた行動とする声もあり、さらには現役日銀幹部の中からも「やや慎重さを欠いているのではないか」との疑問や批判の声が上がっている。
中国恒大危機が第2のリーマン・ショックにならない理由
中国不動産大手・中国恒大集団が債務危機を迎えている。中国恒大集団は本業の不動産業だけでなく電気自動車ビジネスにも進出しようとするなど放漫経営が指摘されており、結果として債務不履行(デフォルト)の可能性が高まった。これが不動産業全体に広がり、買い控えなどによる不動産価格の低下を促すことで中国のマクロ経済への影響が懸念されているのだ。
しかしキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の瀬口清之氏によると「デフォルトの懸念は中国の不動産企業全体の問題ではない」ことが次第に理解され、株式市場は安定を取り戻しているという。
デルタ型直撃でアジアの経済回復に陰り、相次ぐ工場閉鎖
一方、新型コロナウイルス禍がマクロ経済に与える影響は深刻だ。特にアジアの新興国では、感染力の強いデルタ型の急速な広がりとワクチン接種率の低さが小売業や製造業の現場を直撃しており、GDPが前期比マイナスになる国も出てくると予想されている。
アフターコロナに消費税の減税は必要なのか?
コロナ禍で低迷した経済を立て直すために、消費税の減税を検討する動きがある。日本では2021年の衆議院選挙で野党各党が「消費税率の引き下げ」を公約にし、海外ではドイツをはじめ多くの国が景気回復を目的に付加価値税率の引き下げを実施しているという。
最後に
政府・企業・家計の全体から一国の経済を把握するマクロ経済は、国としての政策決定に大きな影響を与える。コロナ禍で世界中の経済がダメージを受けている中、国家はもちろん、企業や消費者レベルの動向が経済回復にどのように貢献していくかに注目していきたい。
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