国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回はイラン・テヘラン郊外の交差点。永瀬さんがこの一枚に込めた思いとは?

交差点はいろいろなものに例えられることが多い。
人生の交差点しかり。
さまざまな場所から延びてきた道が、交わる場所……。
ここはテヘラン市内から車で3時間ほど行った郊外。
工場街で、メインの通り沿いにはさまざまな修理工場が並んでいた。
工場街といっても、近代化された工場が立ち並んでいるわけではなく、
小さな工場が点在している、そんな感じの場所だった。
夜明け前に市内を出発していたので、まだ朝早い。
これから徐々に工場で働く人々がやってくるのだろう、辺り一帯は閑散としていた。
黄色い土壁と、ブロックやレンガで作られた壁には修復を繰り返した跡があり、そこには看板代わりの文字だろうか、もしくはただの落書きだろうか、ペルシャ文字が書かれている。
道も決して整っているとは言い難く、アスファルトがはがれ落ちていたり、鉄の板で補強されていたりした。
進入禁止の道路標識の前に一人の男性が立っていた。
真新しそうなスニーカーを履いたその男性は、これからテヘラン市内へ通勤するのだろうか? この場所にはあまり似つかわしくない服装でたたずんでいた。
そう思ったのは、数人お見かけしたこの街の人たちが、ほぼ全員作業着姿だったからかもしれない。
そのギャップが良くて、写真を撮らせてもらおうと思った。
シャッターを切る時、偶然にも走って来た砂まみれの車。
そのすれ違う瞬間をカメラに収めた。
交差点……さまざまなものが交わる場所……さまざまな事柄に例えられる場所……。
この写真を撮って、改めてそのことを思った。
からの記事と詳細 ( (120) 交差点で起きた偶然 永瀬正敏が撮ったイラン - 朝日新聞デジタル )
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