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Thursday, April 2, 2020

新型コロナウイルスによる世界的な危機を、フォトジャーナリストはいかに伝えているのか:5つの印象的なシーン|WIRED.jp - WIRED.jp

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの最前線にいるフォトジャーナリストたち。さまざまな危険や苦難、葛藤を乗り越えながら撮影したシーンの数々は、人々に鮮烈な印象を残している。そのなかから、中国、イタリア、米国で活躍する5人が撮影した5つの印象的なシーンを紹介する。

WIRED(US)

フォトジャーナリストたちは、あらゆるニュースの最前線を飛び回っている。ところが、新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、その最前線はどこも封鎖されている。

中国の武漢で2019年12月に初めて症例が確認された新型コロナウイルスは、あっという間に世界中へと広がった。世界保健機関(WHO)が言うところの、「現代における決定的かつ地球規模の健康危機」に陥ってしまったのだ。

新型コロナウイルスの感染症「COVID-19」の発症者は世界中におり、立ち入りを厳しく制限された行政施設や病院、あるいはクルーズ船内に隔離されている。亡くなった人の数も右肩上がりに増えている。ウイルスと闘う各国政府の対策が進むにつれ、国境は封鎖され、学校や職場の閉鎖が相次ぎ、誰もがみな打ちひしがれている。

こうした状況が、フォトグラファーたちに特別な試練を課している。社会距離戦略(ソーシャル・ディスタンシング)による制約の下で、この危機的な状況を記録しなければならないのだ。人々の顔を覆うマスクは、その最もわかりやすいシンボルである。

「4〜5年前の干ばつのときとよく似ています。あのころよく目にしたのは、乾いてひび割れた土が広がるひどい光景の写真ばかりでした」と、ゲッティイメージズのフォトグラファーであるジャスティン・サリヴァンは言う。「状況をわかりやすく伝える方法は限られています。ボールのような大きさのコロナウイルスが跳ね回っているわけではありませんから」

それでも世界のフォトジャーナリストたちは、この新型コロナウイルスのある世界を生きる人々のマスクの向こう側にある日常を記録しようと奮闘している。それと同時に、自らの安全と心の安定を守る努力もしなければならないのだ。

中国:ウイルスと戦う人々

北京を拠点とするフォトグラファーのケヴィン・フレイヤーにとって、それはつらく困難な毎日だったはずである。しかし、彼はそのころのことを思い出せない。「それほど強烈な体験だったということです」と、彼は言う。

中国政府は1月23日に武漢市に徹底した封鎖令を敷き、続いて首都である北京を守る動きに出た。国民の移動を制限し、国外からの入国者全員を14日間隔離する措置を講じたのだ。

このためフレイヤーは、同じくジャーナリストを職業とするパートナーと1カ月以上も離れて過ごさねばならなかった。学校が閉鎖されていることから、6歳になる息子の勉強を見てやるために毎日数時間を費やすことにもなった。

「言うまでもなく、息子の健康と幸せが最優先です」と、フレイヤーは言う。「自分の家族に思いやりや共感をもてない人が、仕事でそれを発揮できるはずがないでしょう?」

Blue Sky Rescue

3万人のメンバーが捜索救助や医療に携わっている中国最大の人道支援組織「ブルースカイ・レスキュー」。今回の新型コロナウイルスの感染拡大においては、公衆衛生面での支援活動も展開している。この写真では、防護服を着込んで燻蒸装置を背負ったヴォランティアが、北京市内の集合住宅で消毒作業をしている。KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

さまざまな制限に阻まれながらも、彼はできる限り写真を撮り続けている。病院への立ち入りが禁じられ、アパートやオフィスにもなかなか入れてもらえない。部外者との接触を恐れる人も多い。それらすべてが彼の見える世界を狭めている。

微粒子を通さないマスクや手袋を着用し、通常よりかなり離れた位置から被写体を狙うフレイヤーだが、それでも近寄るなとジェスチャーで制されてしまうことがある。彼はこうも言う。「葛藤を感じます。わたしを撮影へと駆り立てるのは人々の姿ですが、相手に無理強いしたり、苦痛を感じさせたりするのは嫌ですから」

こうした障害に屈することなく、フレイヤーはウイルスと戦う北京の人々の暮らしを記録しようとしている。ひたすらこの難局を乗り越えようとする住民たち。防護服を着込んで消毒装置を担いで危機に立ち向かう、人道支援組織「ブルースカイ・レスキュー」のスタッフ。いずれも感動的な記録である。

「ほとんどの写真にいつも共通して登場するのがマスクです」と、彼は言う。「ですから可能な限り、わたしは人々がマスクを外している様子を思い浮かべるようにしています。そして、その場の空気や雰囲気を伝える要素を写し込むようにしているんです」

イタリア:人影が消えた「偉大なる場所」で

中国から4,000マイル(約6,400km)ほど離れたイタリアで活動するロイターのフォトグラファーであるヤラ・ナルディは、外出の際に最高レヴェルの防塵性能をもつFFP3マスクと手袋を必ず着用し、カメラ用の滅菌シートを持ち歩くことが習慣になっている。彼女は1月23日に最初の症例がイタリアで発表されて以降、新型コロナウイルス関連のニュースを追い続けている。

その後、患者数はあっという間に43,000人を超えるまでに膨れ上がり、死亡した人の数は4,800人を超えて中国を上回った。にぎわっていた広場や、おしゃべりの声が響いていたトラットリアには、ぼうぜんとするほど不気味な静けさが漂っている。

「わたしの仕事はひとりでする作業がほとんどですが、こうしてコロナウイルスのニュースを伝えていると、まるでこの孤独が世界中に広がってしまったような気がします」と、ナルディは言う。

A man participates in a musical flash mob

ローマで人々を励ますために展開された音楽のフラッシュモブに参加する男性。YARA NARDI/REUTERS/AFLO

ヴァチカン市国のサン・ピエトロ広場からミラノの大聖堂まで、イタリア地域の「偉大なる場所」から人影が消えてしまった──。その様子をありのまま伝えることは、ナルディにとって重要な仕事である。それと同時に彼女は、驚くべき連帯と絆の瞬間をもとらえようとしている。

部屋の窓から音楽のフラッシュモブに参加するローマの住民たちの姿も、その一例だ。「写真は出来事を伝える素晴らしい手段です。それを簡単に手放すことなどできません」と、ナルディは言う。「ウイルスは目に見えませんが、実のところさまざまな表情をもっているのです」

A masked person walks through St. Peter’s Square in Vatican City

サン・ピエトロ広場を通り抜けるマスク姿の人。ここヴァチカン市国ではウイルスの封じ込めを図り、教皇フランシスコによる日曜の祈りがネット中継に変更された。YARA NARDI/REUTERS/AFLO

ワシントン州:写真家としての倫理と感情

大規模かつ抽象的な危機を、人間味を交えて伝えることは難しい。だが、高齢者介護施設「ライフケアセンター・オブ・カークランド」でそれをしようとすることは、おそらくもっと難しいだろう。

シアトル近郊のカークランドにあるこの施設は、米国における新型コロナウイルス感染症の発生場所としては最大規模であり、35人の入居者が亡くなっている。報道カメラマンが施設に立ち入ることは許されていない。「このため、人間らしさや親しみ、心の動きを感じさせる写真を撮ることが難しいのです」と、シアトルを拠点に活動するロイターのフォトグラファー、デイヴィッド・ライダーは言う。

Lori Spencer talks on the phone with her mother Judie Shape

シアトル近郊にある高齢者介護施設「ライフケアセンター・オブ・カークランド」では、新型コロナウイルス感染症によっておよそ35名の入居者が亡くなった。写真はウイルス検査を終えた81歳の母ジュディ・シェイプと、携帯電話で窓越しにで話すロリ・スペンサー。DAVID RYDER/REUTERS/AFLO

ライダーはこの施設について報道する際に、できるだけ駐車場に近い場所に立って、建物の外の様子だけを撮るようにしている。だが、それでも室内にいる入居者が写り込んでしまうことがある。彼は重要な歴史の場面を伝えると同時に、細心の注意と敬意を払うよう努めている。

「撮影していい被写体には倫理上の限度があります」と、彼は言う。「室内にいる方がはっきり写っている場合は、仮に自分が許容範囲だと思っても、ご家族に確認をとることがあります」

ライダーが撮る写真には、高齢者の健康に対する彼自身の日常的な気遣いが表れている。そうした心配りに加え、新型コロナウイルスがもたらすさまざまな不安を抱えながらも、「仕事にこだわりをもつことが、わたしに目的意識を与えてくれるのです」と、彼は言う。

カリフォルニア州:最前線に立つということ

ゲッティイメージズのジャスティン・サリヴァンは、ニュースの対象と自分との距離を縮める別の手段をサンフランシスコで見つけた。ベイエリアに感染が広がり始めた2月下旬から、彼は新型コロナウイルスによる危機の動向を追っている。「撮影できるものといえば、マスクを着けた大勢の人々と空っぽの商品棚ばかりでした」と、彼は振り返る。

こうしたなか、クルーズ船「グランド・プリンセス」号が3月初めにサンフランシスコ湾に到着すると知って、彼は活動範囲を広げられるかもしれないと期待していた。ところが、船内で新型コロナウイルス感染症が発生したことを理由に、この船はサンフランシスコへの入港を拒否されてしまったのである。

それから5日後の3月9日、グランド・プリンセスはオークランド港に入港した。こうして彼は結局、船から2,000フィート(約600m)ほども離れた報道陣エリアにとどまって写真を撮ることになる。

the Port of Oakland

オークランド港に着岸したクルーズ船「グランド・プリンセス」から降りる乗客と、バルコニーで見送るほかの乗客たち。このクルーズ船内では新型コロナウイルス感染症が発生し、3月5日にサンフランシスコ港への入港を拒否された。JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

そこでサリヴァンは、愛用のドローン「DJI Mavic 2 Pro」を使うことにした。船の上空わずか250フィート(約76m)の高さにドローンを飛ばし、最初に乗り込んだときとは打って変わって疲れ切った表情で下船する乗客たちの姿をカメラに収めたのだ。そのときの写真の1枚は『ニューヨーク・タイムズ』紙の1面を飾った。

サリヴァンは言う。「わたしにとって、ニュースの発生地点にいることが重要です。わたしの仕事で大切なことは、最前線にいることなんです」

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April 03, 2020 at 09:00AM
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