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Tuesday, July 19, 2022

量子コンピューターが化学研究を変える - 日経サイエンス

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私には目的がある。偶然の幸運に頼らずに化学の発見を成し遂げられるようにすることだ。気候変動やCOVID-19のような重大な問題は,運だけではどうにもならない。自然は複雑で力強い。科学の発展をもたらすには,その自然を正確に数理モデルで表す必要がある。特に化学分野においては,化学反応のエネルギー論を正しく理解せねばならない。こうした考えは以前からあるが,そこには大きな制約がある。最強のコンピューターをもってしても,単純な分子の挙動すら完全には予測できないのだ。量子コンピューターが今後,重要な飛躍をもたらす可能性があるのはまさにこの点だ。

古典コンピューター(量子コンピューターではない従来のコンピューターのこと)で化学反応をモデル化するには,近似が不可欠だ。電子数個の量子的な振る舞いでも,計算量が膨大で時間がかかりすぎ,完璧には計算できないため近似計算が必要になる。

近似するたびにモデルの価値は下がり,モデルの検証と補正のために必要な実験量が増える。しかし量子コンピューターは計算の方法が違う。量子ビットそれぞれが特定の電子スピン軌道を表し,量子もつれなどの量子現象を利用することで,電子間の相互作用を近似せずに表すことができる。今や量子コンピューターは,水素化リチウムのような小さな分子のエネルギーや特性をモデル化できる水準に達している。今よりずっと明確に化学的発見を導いてくれるモデルを提供できるのだ。

続きは日経サイエンス2022年9月号にて

著者

Jeannette M. Garcia

BM基礎研究所の量子応用,アルゴリズム,理論チームのシニアマネージャー。量子コンピューティングのための計算科学的な応用と理論の研究チームを率いている。

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化学計算・機械学習 量子コンピューターの2つの挑戦」,御手洗光祐,日経サイエンス2020年2月号。
特集:量子コンピューター最大の壁『エラー訂正』」,藤井啓祐/Z. ナザリオ,日経サイエンス2022年8月号。

原題名

Chemistry’s Quantum Future(SCIENTIFIC AMERICAN August 2021)

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