
サケがさらされている脅威
カナダの最西端に位置するブリティッシュ・コロンビア州の沖合では、常時5種類のサケが泳いでいる。小さくて比較的数が多いピンクサーモン(カラフトマス)や、最も危機にひんしているキングサーモン(マスノスケ)などだ(編注:サケとマスに生物学的な区別はない)。これらのサーモンは多くの場合、州内の山岳部を流れる河川でふ化し、太平洋まで川を下る。海で長い時間を過ごし、成魚になると生まれた川に戻り、産卵して命を終える。そして、また新しいサイクルが始まる。しかし、このサイクルを繰り返すことがどんどん難しくなっている。 気候変動、汚染、海上の養殖施設からもたらされる病原体、乱獲、産卵地周辺の開発など、サケとその生息地に対する脅威は無数にあり、状況は悪化する一方だ。太平洋サケの資源は長期的に減っており、多くの群れが瀬戸際にある。「野生のサケのためにできる限りのことをしなければなりません」とPSFのジェイソン・ファン氏は語る。つまり、気候変動と闘い、生息地を回復させ、弱った群れを慎重に管理する必要があるということだ。 サケの崩壊は先住民の文化、そして、サケに直接または間接的に依存しているすべての人、植物、動物に影響を与える。メニア氏によれば、サケは「ブリティッシュ・コロンビア州の動植物130種以上」を支えるキーストーン種(中枢種)でもある。 生態学者のミーガン・アダムス氏はサケと動植物の共生関係を研究している。アダムス氏によれば、クマが健康に繁殖するためには、サケの栄養が必要だという。そして、クマが食べ残した部分の栄養分を森が吸収する。「サーモンは驚くほど太っ腹です」とアダムス氏は言う。外洋で何千キロも旅した後、「彼らは産卵のため淡水環境に戻ってきます。その生涯を通じて蓄積した海の栄養分をすべて持ってくるのです」 絶滅の危機にあるシャチもサケに依存している。ブリティッシュ・コロンビア州、米国アラスカ州、ワシントン州の沖合に暮らすシャチは南北2つの群れに分かれており、南の個体群は74頭、北の個体群は約300頭しか残されていない。 シャチたちはホエールウォッチャーのお気に入りで、1頭当たり毎日約25キロのキングサーモンを食べる。しかし、キングサーモンが希少な存在となり、シャチたちが外洋で狩りに費やす時間が延びたため、科学者やホエールウォッチャーはシャチをめったに見られなくなった。ただし、同じ太平洋沖にやって来る回遊型のシャチは比較的見つけやすい。こちらは400頭の群れで、サーモンなどの魚を捕食するアザラシをはじめとする哺乳類を主に食べる。 現在は米国とカナダと呼ばれるようになった太平洋岸地域の先住民にとって、サケは常に不可欠なものだった。食用はもちろん、社会的な目的や儀式にもサケが使われる。サケは必要以上に捕らないという考え方を象徴する存在であり、先住民に伝わる漁法は本質的に持続可能だ。民族の歴史や文化との精神的なつながりを意味する伝統として、サーモンの骨を川へ返す儀式を行ってきた先住民族もある。ファーストネーションと呼ばれるカナダの先住民族は今も、数世紀前にヨーロッパ人が植民地化を行ったときに失った漁業権を取り戻そうと戦っている。
からの記事と詳細 ( 野生のサケを守れ、さまざまな取り組みがカナダで進行中(ナショナル ジオグラフィック日本版) - Yahoo!ニュース )
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