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Wednesday, December 20, 2023

【どうなる部活動改革⑧】 室伏氏「地域移行は子供の可能性広げる」 - 教育新聞

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 部活動の「改革推進期間」が今年度からスタートし、各地の教育委員会や学校がさまざまな取り組みを進めている。旗振り役の国はどのような課題意識を持ち、どう対応していくつもりなのか。連載の締めくくりとなる今回は、男子ハンマー投げの五輪金メダリストでスポーツ庁のトップを務める室伏広治長官に話を聞いた。

――部活動改革を必要だと考える問題意識を改めて教えてください。

 教育やスポーツの裾野の拡大という観点で、部活動が果たしてきた役割は大きいと思います。一方、少子化によって中学校の小規模化が進み、1校だけではチーム編成の人数が足りなかったり、そもそもプレーしたいスポーツが部活動として存在しなかったりというケースが増えてきています。

 逆にたくさんのメンバーが集まる競技・地域では、トップアスリートを目指す子からレクリエーションとして楽しみたい子まで、さまざまな目的を持った生徒が一つに集約されることで、一部の生徒しか試合に出られないといった問題も起きています。部活動という形だけで子供たちにスポーツの機会を提供するのは、難しくなってきているのではないでしょうか。ですから、社会教育のような形で学校の外にもスポーツに親しめる場を設け、専門家の力を借りながら持続可能なものにしていこうということです。

「指導者の確保には発想の転換も必要」

――今年度から部活動の「改革推進期間」が始まりましたが、手応えはいかがですか。指導者の確保が難しく、地域移行がスムーズに進んでいない地域もあると聞きます。

 これまでは学校単位での参加が原則だった全国中学校体育大会(全中)において、2023年度から地域のスポーツ団体に所属する生徒の参加が認められたのは、改革の第一歩として良かったと思います。また、339市区町村をモデル地域として、財政的な支援も含めて地域に合った部活動改革を後押ししています。もちろん現状に満足しているわけではなく、地域スポーツをシステムとして成り立たせるための好事例をさらに増やし、全国に展開していくつもりです。

 指導者を確保する上では、発想の転換も必要になります。中学校段階でのスポーツの役割は、トップアスリートを育てることが目的ではなく、子供たちの「運動欲求」を豊かに高め、それに応えることです。特定の競技を本格的にコーチングできるような指導者だけではなく、レクリエーションのような形で体の動かし方を教えられるような人まで対象を広げれば、体育教員も含め、地域にはさまざまな人材がいると思います。また、地方には海や川などの素晴らしいフィールドがあるわけですから、こうした資源の活用を考えるのも一案です。

「『ゆとり』の指導要領は正しかった」

――部活動の教育的側面については、どうお考えでしょうか。

 日本では20年以上前、週休2日制に合わせて、各学校が「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し、その中で主体的に学んでいく子供を育てていこうという形で学習指導要領が改訂されました。ところが、部活動においては従来の考え方が維持され、指導者と生徒の縦関係や長時間練習が続いてきた側面は否めないように思います。

 ことスポーツ界に関して言えば、当時の学習指導要領改訂の方向性は正しかったと言えます。指導者に言われたことだけをやるのではなく、将来を見据えながら自分の頭で考え、場合によっては最適な指導者を自ら探しに行く。そんな力を身に付けた日本人アスリートが今、世界の第一線で活躍をしています。海外ではアスリートと指導者の間には上下関係はなく、対等にコミュニケーションを図りながらトレーニングを行っています。地域移行によってスポーツがさまざまな形で開かれることで、子供たちと指導者が同じ目線のフラットな関係を築いたり、複数のスポーツに親しんだりする環境がより充実していくとよいと考えます。

インタビューに答える室伏長官=撮影:大久保昂
インタビューに答える室伏長官=撮影:大久保昂

幼少期に結果を出しても、大成しない可能性も

――中学校段階で全国レベルの広域的な大会を開催することは、部活動の過熱化の一因とも指摘されてきました。

 大会の在り方について直接的に述べるのは難しいですが、子供たちの競技力を高める、成長を促すという観点で見た時、敗退すれば1試合で終わってしまうようなトーナメント方式が良いのかどうかは考える必要があるように感じます。全国大会ともなれば、わざわざ遠方から来る生徒もいるわけですから。

 幼少期に結果を出したからと言って、競技者として大成するかどうかは分からないことにも留意すべきでしょう。勝利を目指すことはもちろん素晴らしいのですが、14~18歳のユース五輪に出た選手が将来オリンピアンになるという例は、ほとんどないとも言われます。私も中学時代は陸上部に所属していましたが、ハンマー投げはしていませんでした。全中の出場経験もありません。

 苦しいトレーニングばかりが続けば、子供はスポーツが嫌いになってしまいますし、仮に結果が出たとしても、バーンアウトにつながりかねません。中学生段階では、体の動かし方を学んだり、スポーツに楽しさを見いだしたり、自分で考える習慣を身に付けたりといったことが大切です。

――部活動の地域移行に対しては、教員間にもさまざまな考えがあります。

 子供たちにスポーツの楽しさを伝えたい、土日も生徒たちの育成に関わりたいという教員の方には、兼職や兼業などの形で地域活動に協力いただきたいと考えています。また、土日の活動が地域に移行された際には、地域活動を通じてたくましくなった子供たちがまた月曜日に教室へと戻ってくる、そんなふうに受け止めていただけるとうれしいです。

 部活動の地域移行は、子供たちの可能性を広げるものです。現場の教員の皆さまも、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。

(最終回)

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