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Friday, May 6, 2022

千葉の天然ガス 価格高騰の影響受けず 地産地消のエネルギー - nhk.or.jp

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いま、電気やガス料金の値上げが、暮らしを直撃しています。ロシアのウクライナ侵攻などの影響で、原料として輸入される原油や天然ガスの価格が高騰しているからです。こうしたなか、千葉県では地元で採取された天然ガスが、家庭で使われています。地下には、天然ガスが地下水に溶け込んだ「南関東ガス田」があり、主に茂原市など九十九里浜に近い地域で採取されています。価格変動がなく、家計に優しい「地産地消」のエネルギーとして、注目される千葉県の天然ガス。取材すると、さまざまな可能性や課題が見えてきました。

(千葉放送局 記者 大岡靖幸)

ガス価格 ウクライナ侵攻などで高騰も 千葉では変わらず

千葉県茂原市のガスを利用する家庭に取材に訪れました。お湯を沸かしているガスレンジの「都市ガス」には、地元で採取された「天然ガス」が使われています。男性は、ガスの価格、供給ともに安定しているとして、満足そうでした。

茂原市のガス利用者

「今、ガスの値上げの話が聞こえますけど、そういう話も一切ガス屋さんから話しないですから。非常に安心して使えます」

いま、輸入される天然ガスの価格が高騰しています。温暖化対策やコロナ禍からの回復を見込んだ世界的な需要の高まりに加え、ロシアのウクライナ侵攻によって供給が不安定となっているのが原因です。都内の大手ガス会社の平均的な家庭のガス料金は、5月までの半年間で、約770円、15%あまり値上がりしました。一方、千葉県産の天然ガスを使う茂原市に本社があるガス会社の料金は変わっていません。

茂原市に本社があるガス会社の担当者
「地元にある天然ガスということで、輸入価格に影響されないこと、ある程度の量がしっかり確保されているということが千葉県産の強みだと思っている。しっかり守っていかなければならない」

千葉県の天然ガス生産量は全国2位 17万世帯に供給

千葉県の天然ガスは、主に茂原市など千葉県の九十九里浜に近い地域で採取されています。今から300万年から40万年ほど前に、海底に沈殿した有機物が地中で分解されてガスとなり、地層内の地下水に溶け込んだものとされています。

ところによっては、地中の天然ガスが自然に湧き出ていて、地域を流れる川ではガスが小さな泡となって次々と浮き上がってくる現象も見られます。採取しやすいことから、千葉県にはガスを採取する井戸が600か所以上あり、天然ガスの生産量は新潟県に次いで全国2位です。

長生村にあるプラントでは、地下1400メートルから地下水をくみ上げて天然ガスを分離した後、特有の匂いをつけて都市ガスに加工しています。プラントを所有するガス会社のグループでは、他の井戸から採取した分も合わせて、千葉県内のおよそ17万世帯に地元産の天然ガスだけでつくった都市ガスを供給しています。

茂原市 「地産地消」のエネルギーに魅力 移住者が増えるかも?

茂原市のご当地検定「ガス博士」

地元で採れたガスを地元で消費することで、安定した価格や供給量が実現できる。こうした「地産地消」のエネルギーの魅力に、茂原市では期待する声が上がっています。
市では、「天然ガスは茂原市が誇る地産地消の資源。東日本大震災の時は電気がすべてシャットダウンした一方で、天然ガスだけは出ていた。そうしたメリットが、ウクライナ侵攻の今だからこそ改めて見直されてくるのでは」と話しています。
地元の市民団体は、3年前から「ガス博士」というご当地検定を行い、天然ガスを市の知名度やブランド力の向上に繋げようとしています。主催団体では、「資源に恵まれた暮らしやすいまちと 多くの人に知ってもらえれば、移住してくる人が増えるかもしれない」と、期待しています。

大きな課題…採取しすぎると地盤沈下のおそれ

天然ガスは、いいことずくめのようですが、大きな課題があります。千葉県産の天然ガスは、地下水に溶け込んでいるため、採取のために地下水をくみ上げすぎると地盤沈下が起こるおそれがあるのです。実際に、都内の東京湾沿岸では、昭和30年代から40年代頃にかけて、地下水や天然ガスを大量に採取した結果、大きな地盤沈下が起きています。このため千葉県は、天然ガスの採取を規制しています。需要があるからといってすぐには増産できないのです。千葉県の熊谷知事は、記者会見で、地盤沈下を防ぐ技術の開発に期待を示しました。

千葉県 熊谷知事

「まさに千葉県が誇る資源であり、天然ガスが注目される中、しっかり大事にPRしていきたい。一方で、今後地盤沈下を生じさせないような新たな技術が出てくれば、さらなる増産はできると思うが、現時点では地盤沈下を抑制するだけの採取量に制約するなかで活用していくことなる。そういう技術が出てきてほしいと願っている」

天然ガス 技術開発の必要性と「地産地消」のメリット

「地産地消」のエネルギー、千葉県産の天然ガス。地下の資源に詳しく、地盤沈下の防止の研究も行っている東京大学大学院の德永朋祥教授は、さらなる技術開発の必要性を強調した上で、ウクライナ情勢の収束の見通しが立たない中、地域に大きなメリットと可能性をもたらしているとしています。

東京大学大学院 德永朋祥教授
「天然ガスは、地盤沈下を防ぎながらエネルギーを生産する技術はいまだ確立しておらず、継続的な技術開発が必要だ。日本にある数少ないエネルギーで、数百年の利用可能量があるが、いっぺんに使うことができないという特徴を持った資源なので、私たちがどれくらい賢く使っていけるかを十分考えないといけない。地元の方々が合意をして納得できるような形で開発と環境保全とエネルギー利用を達成していくことが大事で、それが実践できれば大事な資源を次の世代、次の世代につないでいけると思う」

取材後記

国内で天然ガスが採取できるのは千葉県のほか、新潟県や北海道など限られた地域です。採取できる総量も国内全体の天然ガス使用量のわずか2%ほどしかなく、そういう意味では「ごく一部の地域の話」ではあります。ただ最近は、温暖化対策などを背景に、各地でさまざまな再生可能エネルギーの開発が取り上げられ、千葉県でも洋上風力発電の推進など新たな議論が始まっています。德永教授の「地元の人たちが納得して、開発と環境保全と利用をしていくことが大事」と言う意見は、まさにそれぞれの地域の人たちが暮らしやすい「持続可能社会の実現」に向けた指針となる考え方だと感じました。

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