次世代のコンピューターになると期待される「量子コンピューター」の研究拠点として、理化学研究所が今年、埼玉県和光市に「理研量子コンピュータ研究センター(RQC)」を発足させた。将来の実用化をめざし、研究が進む最前線を訪ねた。
白く塗られた直径約60センチの筒型の装置を触ると、ひんやり冷たかった。この中に、量子コンピューターの心臓部であるチップが収められている。
装置は、いわば超高性能な冷凍庫だ。極低温の液体ヘリウムを循環させ、希釈冷凍という仕組みを使って、物質をこれ以上冷やせない絶対零度(マイナス273・15度)に0・01度まで近づける。こうした極めて低温の世界では、電気抵抗がゼロになる超伝導という現象が起きる。この超伝導状態が、量子コンピューターには欠かせない。
ふつうのコンピューターは、電子があるかないかで「1」と「0」を表現して計算する。こうした計算単位を「ビット」と呼ぶ。パソコンやゲーム機の計算性能を「32ビット」や「64ビット」などと表現することもある。
一方、量子コンピューターは、1でも0でもない、逆に言えば1と0を同時に表すことができる「量子ビット」を使って計算する。1ビットごとに1と0の二つの状態をとれるため、はるかに多くの数の組み合わせを使って大量の計算を一気にできる。
ただ、量子ビットをどうやってつくるのかが課題だった。
ミクロの世界の物理現象を扱う量子力学に基づくと、超伝導状態では、数十マイクロ秒というごくわずかな時間だけ、量子ビットを作れる。そのため、大きさ約1センチのチップを極低温まで冷やす必要がある。
この方法で世界で初めて量子ビットを作ったのが、RQCの中村泰信センター長だった。1999年、当時NECにいた中村さんや蔡兆申(ツァイヅァオシェン)・RQCチームリーダーが科学誌ネイチャーに論文を発表した。
それまで、理論でしかなかっ…
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