
◇奥深いウイルスの世界
ウイルスは初め病原体として発見され、現在ではヒトや動物の体に常在していることや体に必要な機能に関与している可能性が徐々に明らかになってきました。 ウイルスは細菌と異なり自己増殖できません。宿主であるほかの生物の体を利用して増殖する様は、動物行動学者リチャード・ドーキンス氏の著書『利己的な遺伝子』でいわれる遺伝子を中心とした生物のあり方、つまり私たち人間を含めた生物個体は遺伝子が自らのコピーを残すための「乗り物」であるという発想を体現しているようにも思えます。 この発想に立ちウイルスがうまく増殖している例として、直感的に思い付くのはヘルペスウイルス(単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型)です。なぜならこれらは非常に感染力が高く、多くの人が日常的に感染しているからです。世界で50歳未満の37億人(全体の67%)が1型に、15~49歳までの4億1700万人(全体の11%)が2型に感染していると推定され、しかもほぼ常在しているような状態です。仮にヘルペスウイルスに生存戦略があったとしたらそれは「成功」といえるでしょう。 逆に、エボラ出血熱を引き起こすエボラウイルスは「失敗」例の1つかもしれません。簡単には人から人へうつらず、しかも症状が重く死亡率が平均50%と高いです。宿主が命を落とせば、自己増殖できないウイルスは伝播しにくくなります。
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